OUTSIDE IN TOKYO
SUZUKI TAKUJI INTERVIEW

鈴木卓爾『嵐電』インタヴュー

9. 嵐電っていうものに向かって行ったら、自ずと映画になるだろうっていう感じを信じてやってました

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OIT:もう一つ具体的なシーンでお聞きしたいのですが、子午線(石田健太)、8ミリくんが「自分が好きなものを撮ろうと思ってカメラを買って撮っていたら、自分が撮っているものが好きになった」っていう台詞がありますね。この台詞は、この映画の世界観のみならず、「映画」や「写真」という複製芸術の世界の原理を表しているように思えたんです。8ミリくんの台詞としてももちろんいいんですけど、更に広がりのある台詞で素晴らしいなと。そこから、狐と狸の時の写真とか、その時は誰も写ってなかったり、奥さんだけ写ってたり、衛星だけ写ってたり、そういう話に繋がっていく訳ですよね。
鈴木卓爾:そうですね、何なんでしょうね。
OIT:繋がり方が非常に有機的な感じというか、頭で考えたというよりは、おっ、なんか繋がっちゃってるみたいな感じといいますか。
鈴木卓爾:パズルのような不思議な繋がり。写真に関しては現場中も悩んでて、何が1枚目で2枚目で3枚目かとか、ちょっとその写真の出し入れもだいぶ撮影稿から変わってると思うんですよね、決定稿から。それは本当にずっと悩んでいまして、みんなにも相談したりして、まあこれかなという感じで出したんですね、結局。面白いですよね、何なんでしょうね。
OIT:言葉でこうですって説明する面白さより、映画全体の中で見ていくと、あぁ〜ってなる、1回目に観た時はあまり気付かなかったかもしれないけど、2回目観ると、ここもこういう風にちゃんと作ってるんだなみたいな、そういうのが見えてくる良さがありますね。
鈴木卓爾:でも本当に嵐電というものがしっかり撮れるってなってから、かなり打ち合わせも経て、京福電鉄さんがかなり全面的に協力してくださって、運行時間を守りながら私達も撮影はしていますけれども、電車止める訳にはいきませんから、安全面も考える必要もありますしね。だから凄く自分達の都合ではなくて、電車の運行するシステムに合わせて、電車が来ました、どうぞ、よーい、スタート!ってやりましたね。学生がずーっと近い方から遠くで見てて、カーブ曲がってきました、どうぞ、よーい、スタート!って言って、芝居がちょうどここに来るみたいな。タイミングが駄目だったら、もう一回嵐山行って、また四条大宮へ行って、戻ってくるまで50分待たないといけない。ただ50分さえ待てば来るっていうのもあるんですけど、50分ってでかいですよね、僕達のこの規模ではっていう大前提の中で、みんなこの時間に合わせて行くぞーって言って、っていうのが作り方のルール化してましたね。嵐電っていうものに向かって行ったら、自ずと映画になるだろうっていう感じを信じてやってました、今回は。こういう映画になるっていうのは本当に仕上げてみて、マスコミ試写とか、宣伝配給とか始めて、色んな人に観てもらっていきながら、ああなるほど、こういう映画だったのねっていうのが見えてきた、本当に面白いことに。
OIT:繰り返し観ると1回目と2回目で違う印象を受けました。だから観に行く人も2回ぐらい観てもらえると良いかなと。
鈴木卓爾:是非、そうやって発見して頂ければなと思います。
OIT:あがた森魚さんの「島がある星がある」、これはあがたさんが作ってくれたんですか?
鈴木卓爾:そうです、新しくサントラも出るそうなんです。初日に間に合わせて準備しています。シングルで4曲プラスボーナストラックな感じで。劇中の印象的なインストとこの主題歌です。


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