OUTSIDE IN TOKYO
SUZUKI TAKUJI INTERVIEW

鈴木卓爾『ジョギング渡り鳥』インタヴュー

9. この映画は出た人に出演オファーが来るっていうのが
 最終目標なんです

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OIT:ペドロ・コスタが、撮影をしたフォンティーニャス地区の公民館的な場所で地元の人たちに『ヴァンダの部屋』(00)を見せたと言ってました。
鈴木卓爾:自主上映?
OIT:自主上映。なんかそういう場がとりあえずあって、映画上映をやりたい人が、例えばネットにそれが上がってるからダウンロードしてそこで見せれるみたいな、そういう見せる場としては映画館以外にも色々ありそうですよね、スクリーンがあれば。
鈴木卓爾:そうなんですよ、一つはもう手売りの時代だよなぁっていう感触ですよね。それと自分自身が色々なオファーがあって映画を模索していく時に、作り方をどう揺さぶることがまだ出来るんだろうっていうことがやっぱりないと、黒沢(清)さんでもいいし、万田(邦敏)さんでもいいし、皆さんがやってる商業映画の作り方と同じことをやっていいのかっていうのをすごく考えちゃいます。
OIT:映画美学校の万田さんたちの対談を読んだんですけど、趣向してるものが違うのかなっていう感じがしましたね。
鈴木卓爾:そうですね、実は僕もずっと問題視していた部分なんだけれど、やっぱり髙橋(洋)さん、塩田(明彦)さん、万田さんでも、黒沢さんでもそうだけど同じことをもうやれないよねって、やっぱり若い人達は思うと思うんですよ。その人達に先生をやって頂いて映画習ってもやっぱり出てかなきゃいけないっていうか、同じことやってても敵うわけないっていうところにもう来てるんじゃないかなっていう、だから万田さんとかの方法論ってやっぱり正しいと思いますよ、映画のショットの強さとか、映画の時間の持続と緊張感とか。でも『ジョギング渡り鳥』は、それを壊してますから。やはり同じことをやってたらねぇ、という感じがどうしてもしてしまう、そこが微妙なところですね。
OIT:僕は『ジョギング渡り鳥』はちょっとゴダールっぽいなと思って見てたんです、川沿いの緑のショットが『ウィークエンド』(67)の感じとか、SF的設定が『アルファヴィル』(65)の感じとか。
鈴木卓爾:そうですね、設定無理矢理っていうのは『アルファヴィル』から教わったなぁっていうのはありますけど。
OIT:60年代のヌーベルバーグのそういう瑞々しさ、先程、8mmの『にじ』への原点回帰という話もありましたが。
鈴木卓爾:そうなんですよね、8mmで撮ってたのって、やっぱりNGとかOKに分けられない映像だったので。なんかそこにもう既にドキュメンタリー性みたいなことが映画の問題として大きかったのは事実なんですよね。一方でゴダールみたいな映画があって、まあよく分からなかったんですけど、ただ映像は非常に美しい、美しいというかはっとするものがあって美しいわけなんですよね、音の意表をつく組み合わせの時間の中に、言葉にならないものが溢れてるわけなんだけど、そういった表現が一方であって、もう一方で90年代のホラー映画ブームとか、髙橋さんの『リング』(98)とか、ああいうストーリーテラーとしての映画の面白味っていうのが一方でちゃんとあって、ずっとそこで悩み続けていましたよね、それは今も変わらないんです。
OIT:そういうみんな悩むんだろうという状況の中で、これだけ突き抜けた映画が出来てしまった、やっぱり自由としか言えないようなものがあるっていうか。
鈴木卓爾:改めて思うと、キャスティングを理由にして映画を作ってるっていうのがでかいんだと思うんですよね、別に彼らのPVを作ってるわけでは決してないんだけど、最後までにはお客さんに覚えられるように撮るみたいな(笑)、多分そこがでかい。
OIT:急に矢野(昌幸)さんのこと思い出したんですけど、髪の毛がちりちりの時と短い時とありましたよね。あれって撮影期間が単純に違うからああなってるんですか?
鈴木卓爾:そうです、最初は坊主だったんです、1月から11月になった時あんな伸びたんです、で、せっかくだからこれ現場で切ろうと、途中まで髪の毛ありで撮って、矢野君がやってる役は人間じゃないっていうのを証明したいと、人間じゃないところがあるっていうのをずっとアイデアが浮かばなかったんだけど、髪の毛でやりたいって言って、気を抜くと伸びてる。あの切り返しの途中で断髪式やってるんです、現場で。お前今髪伸びた?ううん伸びてない伸びてないっていう、それだけやるために髪の毛切らないでおいてねって言って。
OIT:矢野さん、なかなか良かったですよね。中川さんはもちろんのこと、あと女優役の方ですね。
鈴木卓爾:古内啓子さんですね。
OIT:あの人も良かったですね。
鈴木卓爾:嬉しいです、この映画は実は出た人に、この映画を見た映画監督から出演オファーが来るっていうのが最終目標なんです。この映画に出てる人達はみんな役を募集してるので、そうなってくれるといいなと、みんなね。
OIT:じゃあ、gmailのアドレスを出すとか。
鈴木卓爾:そうなんですよ、出演依頼はこちらへって、ジョギング渡り鳥gmail.com(joggingwataridori@gmail.com)にくだされば。そういう風にみんなになんかちゃんと未来があればいいなと思って。


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