OUTSIDE IN TOKYO
Mia Hansen-Løve INTERVIEW

ミア・ハンセン=ラブ『グッバイ・ファーストラブ』インタヴュー

5. 音楽は、ギー・ドゥボールが持っていたコンピレーションから結構使っています

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OIT:素晴らしいシーンでした。美術館で作品を見て、そこから学生とロレンツの先生がビーチの方に向かってみんなと一緒に歩いて行く、小さい林を抜けて歩いて行くと、そこにビーチがひらけている、そこでかかる音楽も素晴らしかった、ちょっと今までずっとお聞きするのを我慢してたんですが、ミアさんの映画はいつも音楽がとっても素晴らしいんですね。あの曲は二回くらいこの映画の中で使われてたと思うんですが、あの曲について教えて下さい。
MHL:ありがとうございます。後でもっと具体的に答えるんですが、三本ともご覧になっているのでお気付きになってるかもしれませんが、私は映画音楽を作らないんですね。コンポーザーとは仕事をしないんです。それが嫌いなんです。既存の曲を使うのがすごく好きで、出来るだけ映画の中では、例えばラジオのボタンを押して流れてくる、そういう音源から流れてくる音楽を優先したいのが基本なんです。それでも、時にはそうじゃない時もありまして、そういう時は曲をとても慎重に選んで、慎重と言ってももちろん感情的な選択でしかあり得ないのですが、とても主観的に、とても慎重に選んでいます。具体的に言いますと、私が発見したものがありまして、それがコンピレーション・アルバムなんです。イギリスとスコットランド、あるいはアイルランド辺りの伝統的な音楽を集めた7枚のCDのコンピレーションがありまして、それが本当に素晴らしいです。それは確か、three scores and tenというレーベルから出ているものなのかもしれません。その7枚のCDからおおよそ4~5曲くらいを選んで、それを私の映画に使ったりしてます。よく言葉のない曲を使ったりするんですが、言葉がある時はだいたいすぐ分かってしまうんですね、何故ならとても妙な発音で訛りのある英語で歌われているから分かりやすいかと思います。例えば『すべてが許される』の中には最初の方と最後の方にも出てくる曲で、お父さんが娘の手紙を読んだ後、ベッドに横たわっているシーンで流れている曲も、そのコンピレーションからきているんです。

OIT:じゃあ第一作目である『すべてが許される』の時からそのコンピレーション・アルバムを使っていたと。
MHL:はい。『グッバイ・ファーストラブ』にも使われているし、『あの夏の子供たち』の中でもいくつか使っています。例えば、シュリヴァンが帽子を買うシーンに流れている歌(ここでミアが歌ってくれました)、あの曲は時間の流れと自然への愛を語るような子守唄なんですね。コンピレーションの中の子守唄を使うのも結構好きなんです。実は、そのコンピレーションを発見したのはアリス・ドゥボールというギー・ドゥボールの奥さんから紹介してもらったものなのです。それは、もとはと言えばギー・ドゥボールが持っていたコンピレーションで、それをアリス・ドゥボールに貸して頂いた時からすごく好きになってしまったんです。

OIT:ギー・ドゥボールがそれを持っていたんですか?
MHL:はい。それで探し出して買ってしまったんです。

OIT:『すべてが許される』でキンクスの「ローラ」のカバーがかかってたんですが、あれもこのコンピレーションから?
MHL:あれはコンピレーションからとったものではないです。レインコーツというイギリスの80年代、女子のパンクバンドですね。最近はまた、たまにやっているらしくて、パリの近代美術館でライブをやって、それを見に行ったんですけど、一つだけ新しい曲があって、フェミニストソングという曲でした。それを非常に気に入って、最近はそればっかり聴いてるんです。特にフェミニストというわけでもないんですけど。それを聴くとすごく元気が出るんです。

OIT:歌詞の内容は皮肉ってるっていう感じなんですか?
MHL:いや、必ずしもそうじゃないですね。とてもイノセンスがあると思うんですね、ピュアな感じがして、それがすごく誠実さに富んでいるので素直に元気が出るっていう感じ。もし調べるんでしたら、レインコーツとフェミニストソングを検索して、そしてMoMAも入れて検索するとYoutubeでいいバージョンが出てきます、その曲はCDには焼かれたことはないので、それで見て是非聴いてみて下さい。


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