OUTSIDE IN TOKYO
Mia Hansen-Løve INTERVIEW

ミア・ハンセン=ラブ『グッバイ・ファーストラブ』インタヴュー

4. ビーチのシーンでは、美しく、賑やかで、
 人々が普通に生活している、遊んでいるような場所を探しました

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OIT:昨日のトークショーで、ご家族にドイツの血筋があると仰っていましたね。とりわけ『グッバイ・ファーストラブ』はドイツのロケがあって、アンハルトやデッサンへ行き、バウハウスの前を通り過ぎて、デンマーク、コペンハーゲン、ルイジアナというロケーションが出てきて、ドイツ方面へ旅をされたと思うんですけど、それはやはりご自身のパーソナルな部分と関係しているのでしょうか?
MHL:旅の道筋というのはある種の起源へ戻るためのもので、それは私の起源、オリジンでもあります。何故なら父親がウィーンに生まれたのですが、父親のお父さんがデンマーク人だったんです。しかし彼が自殺した時に、父のデンマークとの繋がりは一切切られてしまった。デンマークの親戚とも連絡がとれなくなったし、言葉も話せなかったんです。私は大学ではドイツ語が専攻だったんですが、その傍らでデンマーク語も習ったわけなんです。それもある意味で自分の起源を探るためであり、そして父の代わりに、父の起源を探っていくような行為だったんじゃないかと思うんです。何故なら私は小さい時からずっと父に惚れていたので。大学の時は二回くらい、それこそ記憶があまり良くないので、いつかはっきりとは覚えてないんですが、確か二回くらい奨学金を貰ってデンマークで夏を過ごすことが出来たんです。どちらかははっきり覚えていないんですが、そのどちらかの時にルイジアナという街の、コペンハーゲンから一時間ぐらい離れている街の美術館に行くことが出来たんです。そこは素晴らしい美術館でした。当時の私はちょっと憂鬱な寂しい子だったので、そこで『グッバイ・ファーストラブ』の撮影で戻ることによって新しい記憶を作ることが出来たんですね。今度こそ楽しい記憶を作り直すことが出来たんです。ですから繰り返すことになるんですが、仰っていたトリュフォーの話にも関わりますけれども、映画は人生であるという、そういう混沌とした状態にトリュフォーは陥っていたんじゃないかと思うんです。それはとても楽しいながらも危険でもあると思うんですね、それは全く同感です、共感します。

OIT:ビーチのシーンが素晴らしかったですね、あれがルイジアナでしたか?
MHL:ビーチの所はカストラップという場所で、空港からすごく近いところなんです。コペンハーゲンからも近いので若者達が週末に遊びに来るような所なんです。私はその場所は元々知らなかったんですけど、ロケハンをして探し出した所なんです。あそこはとても大事な場所で、カミーユがずっと一人で引きこもっていたような状態から開き直って人生と和解する場所であり、時間でもあるんですね。それを見せるためには美しい場所で、しかもとても賑やか、人々が普通に生きている、生活しているような、遊んでいるような所が欲しかったんです。あと、これはどうしても私の癖で、生きることは水と繋がっているっていうイメージが私の中にあるので、三つの要素が入っているような所を探したら、その場所が突然見つかったんです。そこはつい最近出来たばかりで、若いスウェーデン人の建築家達が作り上げた、一風変わった建築物が建てられています。私たちは、デンマークに行って第一日にそこで撮影したんです。時間ももちろんぎりぎりだったので、天候がとても気になりました、その一日しかないので。天気が重要だったというのも、そのシーンはエキストラを出来るだけ雇わないで、そこに居る人達を映したかったんです。実際にそこで生きている人間を映したかったんです。その為に本当に最低限のスタッフで音を殆ど録音せずに撮ったんですが、運良く天気も良くて賑やかでとっても良い撮影ができました。


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