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KOMORI HARUKA & SEO NATSUMI INTERVIEW

小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』インタヴュー

5. みんなが知っている知識に頼らないような語り方にしてみようと思って、
 固有名詞を抜いた文章にしました(瀬尾)

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OIT:違う境遇の者同士でも共感できる、そのことが、旅人4人の最初のワンサイクルの中で軸になって映画が構成されているという印象でしたが、そのことは編集の流れの中で意識していましたか?
小森はるか:その意識はありましたけど、前半に纏めようっていう意識はどこまであったか分かりません。共感の部分と、むしろ、共感できないけれどもこうじゃないかって彼らが思う、それをまた超えていくところとか、あるいは、これ以上は聞けないと立ち止まったりする場面をどういうバランスで映画の中で構成していくかっていうのは色々なパターンを試しました。
OIT:色々試したんですね。
小森はるか:試しましたね。一回目に完成したバージョンでは朗読の場面が、後ろの方にぎゅっと纏まってたんです。そのバージョンでは、続けて4人の朗読を聞くような構成になっていて、彼らが共感した部分と戸惑った部分というのを最初に続けて見せて、最後に朗読を聞くものになってたんです。でも、それではないんじゃないかと思って。朗読っていうのはそもそも彼らが高田に来たきっかけとしてもあったし、ワークショップ中にもずっと繰り返し人の話を聞くことの間に並行して続けてきた大事なワークでもあったので、その循環をどう見せるかというのを悩んだ挙句、組み替えて現在の編集のように、語り直しの間に朗読を挟んでいくっていう構成にしたんです。
OIT:そのバージョンは上映されているのですか?
小森はるか:仙台で一回上映しました。その時は、濱口竜介さんと岡田利規さんに来ていただいて、どういうプロセスで作ってきたのかを発表する場にもしたんです。その後、もう一回の撮影を挟んで、大阪のシーンも入れて、再編集をして、山形の時には今のバージョンに近いものになりました。
OIT:なるほど、ところで、“語り直し”のプロセスには脚本があったと言うことですが、事前に読み合わせみたいなことをやったわけですか?
瀬尾夏美:プロセスとしては旅人達がそれぞれ話を聞いて帰ってきたら、まず一対一で二時間くらいかけて聞いてきた話を聞いて、その段階で一度整理をする。こことここが凄い大事だねみたいな話をフィードバックしながら、じゃあこういうのがありましたとかって更に話をした後で、箇条書きの脚本的な物を作るんです。その一稿目で4人が椅子を並べて話している時は、固有名詞も全部入っていて、友達に向かって「今日さ、ともこさんという人に会ってきてね、・・・」というような話になっていきます。そうすると4人で話しているので質問が色々飛んでくるんですよ、「私もこういうことがあったよ」とか、そこで新しい語りが出てくるので、それも含めてもう一回書き直す。その時はその次の段階としてカメラに向かって一対一で語り直すっていうことを考えていたので、ここにはいない遠い誰かにちゃんと説明するっていうイメージがありました。だって、“その時”って、200年後かもしれないじゃないですか、だから、細かい固有名詞は一回抜いてみる、みんなが知っている知識に頼らないような語り方にしてみようと思って、固有名詞を抜いた文章にしました。それをもう一回本人達と、これはこういう風に書いてみたけど、気持ちに添ってる?とか、エピソード抜けてます、とか話をしながら文章を直して、あとは任せた!みたいな感じでしたね。“語り直し”の現場に私はいないので、小森さんとスタッフの福原さんが撮影にいって、本人と一対一で対峙するような形で撮影をしていたと思います。

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