OUTSIDE IN TOKYO
Ildiko Enyedi INTERVIEW

イルディコー・エニェディ『心と体と』インタヴュー

6. ローラ・マーリングこそが、マーリアという女性の原型イメージでした

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OIT:最後に、音楽についてお聞きしたいのですが、ローラ・マーリングの曲が使われていて、大変素晴らしかったのですが、監督は彼女の音楽をどのようにして知ったのでしょうか?
イルディコー・エニェディ:もう随分昔から彼女の音楽を聴いています。彼女が、16才か17才の頃、高校生の頃からでしょうか。この曲自体は、彼女が、27才か28才の頃の曲で、8年位前の曲ではないかと思います。私は、彼女を単に優秀なミュージシャンではなく、特別な詩人だと思っています。しかも、私にとっては、彼女自身が、他ならぬマーリアという女性の、原型のイメージでもあったことを認めなければなりません。しかし、彼女に演じてもらうわけにはいきませんし、本物の女優がこの映画には必要でしたから、アレクサンドラに演じてもらいました。あなたもローラ・マーリングの音楽が好きなのですか?

OIT:はい、好きですね。私は、ミア=ハンセン・ラブの『グッバイ・ファーストラブ』(10)という映画で「Water」 という曲が使われていて、それは、ジョニー・フリンというシンガーソングライターとローラ・マーリングによるデュエットだったのですが、その曲がとても好きで、その後、何枚か彼女のアルバムを買って聴いています。ところで、近年、ハンガリーの映画状況がとても良くなっているという話を耳にします。先日、来日したコーネル・ムンドルッツォ監督からも、ここ15年位の間に飛躍的に良くなったという話を聞きました。エニェディ監督はブダペストで映画を教えられているとのことですが、その良くなった理由をご存知でしたら教えて頂けないでしょうか?
イルディコー・エニェディ:仰る通りで、今はとても良い状況にあります。2002年に映画ファンドに関する新しい法律が出来て、この法律は他のヨーロッパの国々と比べてもとても先進的なものでした。その後、その他のヨーロッパの国々も追随する形となりましたが、それが大きな追い風になって、コーネル・ムンドルッツォを始めとする新しい映画作家の流れが生まれました。ほんの2人の若者がカンヌに選ばれたというだけではなく、多くの映画作家たちにチャンスが与えられ、最初の作品を撮ることが出来ました。しかし、二作目以降は、資金繰りに苦労をし、撮り続けることが出来なくなり、その僅か3年後には一本も作られなくなったのです。しかし、ここ6年間は新しいハンガリー映画のフィルムファンドが立ち上がり、より幅広い方向性の映画が支援されるようになり、一種のハンガリー映画黄金時代を迎えているといった状況にあります。

OIT:『心と体と』が大変素晴らしかったので、次の作品がどのようなものになるか、興味津々なのですが、可能な範囲で教えて頂けますか?
イルディコー・エニェディ:次の作品のタイトルは、『Story of My Wife』といいます。“夫”についての物語で、自分の人生について理解をしようとする40代既婚男性の物語です。舞台は1920年代なのですが、私は、その男性の心の中に入り込みたいと思っているのです。
(※後日、この映画にはレア・セドゥが主演することが発表された。)



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