OUTSIDE IN TOKYO
Ildiko Enyedi INTERVIEW

イルディコー・エニェディ『心と体と』インタヴュー

4. 私たちは、すべてのカットに関して、微に入り細に入り、
 とても注意深く、慎重に扱っています

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OIT:マーテイ・ヘルバイの撮影がとても美しかったのですが、具体的にひとつのシーンに関してお尋ねします。マーリアとエンドレが、精神科医に話を聞かれる、その次のシーンでは、二人が駅で市電を待っているのですが、空が青色と緑色に輝いていて実に美しいのですね。その前のシーンではマーリアは緑色のセーターを着ていて、場面は変わっても、色彩が連続しているように見えたのです。それは意図的なものでしょうか?
イルディコー・エニェディ:私たちは、すべてのカットに関して、微に入り細に入り、とても注意深く、慎重に扱っています。それは、いい感じのスタイルを創り上げるためではなく、私たちが伝えたい物語をより効果的に語るためにそのようにしています。ですから、マーリアが着ている衣装のテクスチャーや色でさえも、物語上の機能を担っています。そうすることで、私たちの伝えたいことがより正確に伝わると考えているからです。例えば、ただひとつを除いて、彼女が着ている服はすべて一色のシンプルなトーンで統一されています。それらは全て淡い色彩で、スタイルは意識的に時流を追わず、見た目にインパクトがあるものではなく、人々が日常で着ているものを敢えて選んでいます。元々アレクサンドラは美しい女性ですから、少し不器用な感じで、全く以てセクシーではない衣装を敢えて選ぶことでマーリアらしさを創り出しています。ただ、あとほんの少し不器用さを出してしまっていたとしたら、それは戯画化され過ぎたものになってしまい、カウリスマキの映画のようになってしまっていたでしょう。もちろん、カウリスマキは大好きな映画作家ですけれど、今回の作品の狙いとしては、ということです(笑)。

OIT:もちろん、そうでしょう!皆、カウリスマキを大好きなのですから!
イルディコー・エニェディ:衣装について、もうひとつお話すると、アレクサンドラが役のための準備をしていた時のことです。それはリハーサルと言えるようなものではなく、彼女と共に時間を過ごしていた時のことなのですが、マーリアのことをふと考えたのです。例えば、彼女がハイヒールを履いていて、スカートも短くて、セクシーな雰囲気だったらどうだろう?あるいは、スニーカーを履いていたとしたら?はたまた、低いヒールの靴を履いたら、彼女はどのように歩くだろう?そういう風にして、アレクサンドラと一緒にマーリアという女性の内面を見つけていったのです。



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