OUTSIDE IN TOKYO
Yoshida Daihachi Interview

吉田大八『桐島、部活やめるってよ』インタヴュー

3. 映画部の前田はフィルムに拘ってるのに、本編はビデオで撮ってる

1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6



OIT:あの裏庭も実在するんですね。
YD:映画では科学棟の裏と呼ばれている場所ですよね。あとは屋上から見えるバスケのコート、あれも実際の位置関係通りです。

OIT:よく見つかりましたよね。
YD:そうなんですよ、よく見つかってくれました(笑)。

OIT:だけど映画部の部室はセットですか?
YD:体育館の地下に軽音楽部の倉庫があって、その横に狭いシャワールームがあったんですよ。ゾンビ達のゲットーみたいなとこですから、そこに作りたいって言ったら、初めは撮影部も照明部も狭すぎるんじゃないかという心配顔でしたが(笑)でも、床にぎっしり座ってる生徒たちが一斉にカメラを見上げる画をどうしても撮りたくて、剣道部の部室に間借りしている映画部の部室として作り込んでもらいました。でも上は体育館ですから、当然バレーとかバスケットの練習の音がすごいんです。だから本番の時だけスタッフが「すみません、ちょっと今だけ、5分間だけ音止めてもらえますか」ってお願いして。

OIT:映画の中のシーンと一緒ですね(笑)。
YD:そうなんです(笑)。本当にある意味、実際の学校で撮影したことで度々リアルと作り物の境い目が分からなくなるくらい、リアルでした。

OIT:今回撮影はフィルムですよね?
YD:いえ、ビデオを使いました。ARRIのALEXAというカメラ。普通とは違う収録の仕方をした最新型カメラでデータは凄く大きかったんですけど、ビデオはビデオですね。

OIT:シネマスコープですよね?
YD:そうです。

OIT:この映画部の生徒は8mmフィルムで撮ってるわけですが、商業映画をフィルムで撮るっていうのはもう大変なんですか?
YD:大変かもしれないけど、まだ可能だとは思います。映画部の前田はフィルムに拘ってるのに、本編はビデオで撮ってることを絶対突っ込まれるだろうなと思ってたんですけど、取材でもあまり聞かれなかったですね。

OIT:フィルムなのかなと思っていました。
YD:僕はこの映画で4本目ですけど、フィルムで撮ったのは『パーマネント野ばら』(10)だけです。以前は僕も前田みたいなことをいつも言ってたほうなんですけど。CMの現場でもフィルムかビデオかっていう議論はここ10年くらいよくあって、でも技術が変わっていくうちに、自分の中にあったはずのフィルムへの拘りがどんどん擦り減っていって。仕方ないというよりは、あんまり問題にならなくなってきたのが正直なところです。もちろん、フィルムとは絶対的に違うんだけど、あくまでも僕の中のプライオリティが変わってしまったという意味です。前田はやっぱりマニアだし、彼らのこだわりっていうのはそれ自体がそれに関わる根拠だったりしますよね。映画部が絶対に譲りたくないであろうディテールの象徴としてフィルムを、自分のかつての実感をベースに使ったんです。


1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6