OUTSIDE IN TOKYO
SAKO TADAHIKO INTERVIEW

佐古忠彦『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』インタヴュー

4. 決して昔話ではなくて、全て、国会論戦のなりを含めて今が見えてくる

1  |  2  |  3  |  4  |  5



OIT:この映画を見ると、逆説的に今の政治状況の貧しさが浮かび上がって来るように思いますが、“オール沖縄”の現代的風景も含めて、現在に通じる沖縄の人々が置かれている状況を描いてますよね、亀次郎さんの生涯を通じて。
佐古忠彦:そうなんです、“通じて”ですね、亀次郎を主人公として描いてはいるんですけど、亀次郎を通して見えるのが歴史の出来事であり、沖縄の当時の熱であり、人々の姿、気持ちだったと思うんですよ。そこで国会で亀次郎が訴えているその中身は、それはそのまま当時の沖縄県民の気持ちだと思うんですね、民意を代弁する姿がそこにあるわけですし。決して昔話ではなくて、全て、国会論戦のなりを含めて今が見えてくるというか。

OIT:そうですね、だからとてもリアルと言いますか、現代に生きる内容であると思います。ところで、前回は大杉漣さんでしたが、今回はナレーターとして役所広司さんが参加されています。今の日本を代表する素晴らしい俳優さんですが、どういう風にやってくださいということになったんでしょうか?
佐古忠彦:どういう方にお願いしたらいいかということを色々考え巡らせた中で、今作は役所さんに是非とも、ってそれだけでした、本当に。それで、役所さんの亀次郎像を作って頂けたというか、本当にそんな感じがします。

OIT:役所さんは亀次郎をご存知だったんですか?
佐古忠彦:前作を観ていただいたんです、それで甚く感じて頂いたようで、こういう人がいたんだねっていう感じもあったと思うんですよね、その中で快諾頂いたという感じです。

OIT:録音には立ち合われたんですか?
佐古忠彦:もちろんです。もう格好良かったですね、本当に、格好良すぎちゃうくらい(笑)。

OIT:役所広司さんという俳優は、スクリーンに出てくると、それが大したことのない映画だったとしても、その場面が映画になるという、本当に希有な役者さんだと思いますが、声だけでも、やっぱり違いますね。
佐古忠彦:力強く演説してるシーンとか、ちょっと亀次郎がおどけて言うところとか、そういうのが見事で。奥さんのフミさんと一緒に辺戸岬で与論島を見ているところも、本当に横にいる妻に語りかける亀次郎がいて、その世界にぐっと引き込んで頂けたと思っています。

OIT:音楽が前作も今回も坂本龍一さんが曲を作られていて、前作が「Sacco」、今回が「Gui」というタイトルがついています。
佐古忠彦:坂本さんとイメージをやり取りしていく中で、とくに今回は、一作二作を包含するような、闘った先の亀次郎の世界というか、チラシのビジュアルにある優しそうな眼差しというか、何か希望も感じるような、そういう後世への眼差しのようなイメージにぴったりくる曲を書いて頂いて、素晴らしい曲ですね。



←前ページ    1  |  2  |  3  |  4  |  5    次ページ→