OUTSIDE IN TOKYO
PARK CHAN-WOOK INTERVIEW

パク・チャヌク『イノセント・ガーデン』』インタヴュー

2. アイディアを色々と足していったら、自然とヒッチコックと出会った

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Q:監督の作品を、いつも出来るだけ予備知識を入れずに拝見しています。いつもこの先どうなっちゃうのかなと思いながら見るわけですが、映画を作る前の段階で、先の読めない展開の話というのことを意識されているんですか?
パク・チャヌク:もちろん、出来る限り予想が出来ないような展開にしたいと常に努力をしています、ただそこで気を付けなければいけないのが、度を越してはいけないということなんです。そうなってしまうとジャンルの特長を失ってしまうからなんです。やっぱりジャンル映画というのは、皆さんが知っているような慣習とか約束に基づいて進んで行くものですよね。だからあまりにもそれを壊してしまうと、そのジャンルとしての特長も無くなってしまって、観客もせっかく映画について行こうと思って観てるいるのに、途中でもうついて行くのを諦めようという風になってしまうと思うんですね。それでは困るので、大枠のところでは少し予測が出来るように、そんな展開にしています。

Q:本作は、ご自身ではどういったジャンルの映画だと捉えられていますか?
パク・チャヌク:アメリカのマーケティングチームと話し合った結果では、心理スリラーというジャンル、あるいはサイコロジカルスリラーという言い方にしようと話しました。

Q:作られる前にそういうお話しをされていたということですか?
パク・チャヌク:それは完成してからですね。私の考えでは、心理スリラーであるのと同じくらい大事なのは成長物語であるということです。“成長物語”っていうジャンルがあるかどうか分かりませんけれども、そちらも大事だと思っています。

Q:ミア・ワシコウスカさんの元の髪の色というのがちょっと正確には分からないんですが、どうしてもブロンドのイメージを持っていて、彼女は今回髪を染めたのだと思うのですが、この色にしたのは理由はありますか?
パク・チャヌク:おっしゃる通りミアさんはブロンドです。今回映画の中では栗色、栗色の中でも濃いめの栗色、茶色にしたんですね、その為にかつらを付けて演じてもらったんですけれども、それはチャーリーとインディアは髪の色も目の色も同じという設定にしたかったからなんです。母親が、二人を並べて見たら、鳥肌が立つくらい似てるっていう風にしたかったんです。そうなると母親は自分のおなかを痛めて産んだ子なのに、自分だけ異邦人のような感じになりますよね、そういうイメージを醸し出せたらと思いました。それなら、ミアさんを基本にしてそれにマシューさんを合わせるという、逆のことも考えられると思うんですよね。でもそうしてしまうと今度はニコール・キッドマンさんまで作り替えなきゃならない。一応は考えてはみたんですけど、マシューさんは金髪が合わなかったんです。それでマシューさんにインディアを合わせるようにしたわけです。だから目の色もコンタクトレンズを使って、二人同じ色にしてもらいました。

Q:それで最後にニコールが娘に対して想いを言うシーンが効いてくるんですね。
パク・チャヌク:そうですね、おっしゃる通りです。特に母親が階段のところで二人を目撃するシーン、あそこで既にミアさんはハイヒールを履いてるんですね、タイトなクローズアップでそれを映すんですが、その時の視線というのは母親の視点になります。チャーリーとインディアを舐めるように追っていくクローズアップなんですけど、そこで本当に二人は似てるという印象を与えられたと思うんです。そうすると母親だけが違うということが顕著になっていく。だからこそ、その後に呪いのようなものを唱えるところでも、力が与えられた気がします。


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