OUTSIDE IN TOKYO
OHATA HAJIME INTERVIEW

大畑創『へんげ』インタヴュー

5. 映画学校っていうのは、出会い系みたいなものですから。人との出会いが楽しかった

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OIT:映画は、今までたくさんご覧になってきたタイプの方ですか?
大畑:普通の人よりかは多分観てると思うんですけど。

OIT:シネフィルっていう感じではない?
大畑:シネフィルでは全然ないです。

OIT:どういう映画がお好きですか?
大畑:僕は子供の頃に観たのが一番ショックだったりすると思うんで、『ロボコップ』(87)とかテレビで見た『ザ・フライ』(86)とか、そういうジャンル物、日曜洋画劇場でやってたような『ターミネーター』(84)とか。

OIT:じゃあ80年代ですね。
大畑:僕、33歳なんで、その頃に観たのがやっぱり一番。

OIT:映画館では?
大畑:初めて行ったのが『沈黙の戦艦』(92)、自分のお金で初めて行ったのがそれだったりしますね。

OIT:スティーブン・セガール!じゃあ結構アクションを観るのが好き?
大畑:はい、今でも好きですし、でも今はもう何でも観ますけど。

OIT:ハリウッド映画が中心ですか、観てきたのは?
大畑:そうです、スピルバーグとか。

OIT:そこから例えば黒沢清さんのを観たりとかということになるわけですか?
大畑:そうですね、大学行く前くらいに観たと思うんですけど。

OIT:やっぱり映画は娯楽というか、別の世界に連れて行ってくれる、そういうものだなっていう感覚ですか?
大畑:はい。もちろん小津安二郎の映画だって別世界に連れて行ってくれるとは思うんですけど、僕が今やりたいのはやっぱりこういうジャンル物っていう形ですね。

OIT:特にホラーっていうことではない?
大畑:あ、別にないです、ホラー、アクション、SF、サスペンス、スリラー、好きです。

OIT:ご自分で脚本を書いてそれを自分で撮れるっていうのが理想ですか?それとも原作ものを演出するとか、これを映画にしてよ、みたいなお話とかがあったら、その辺はどうでしょう?
大畑:今は監督、脚本、編集、全部自分で一人でやってるのは単に他にやってくれる人がいないからなんで、映画の監督をやらせてもらえるなら、もしお仕事とかでやらせてもらえるなら別に原作ものでもなんでもやるつもりでいます。

OIT:『へんげ』は結構、まだ公開前ですけど評判になりつつあると思うんですけど、これからの計画というか、次の手みたいなの何か考えていますか?
大畑:とりあえず今、漫画原作で映画作ってみないかって言われてるんで、それをやろうとしてるところです。

OIT:動き始めるかなみたいなところですか?
大畑:はい。

OIT:それは漫画の原作から脚本はどういう風に?
大畑:僕が書いて、多分凄く少ない予算の映画なんで『へんげ』と同じようなやり方で作られるような映画になると思うんですけど。もちろん今度こそはキャストスタッフの方にはちゃんとギャラをお支払いする形で(笑)。

OIT:それも楽しみですね。間が空けずに、どんどん小さかろうが大きかろうが続けていけるっていうのは大事ですよね。
大畑:本当その状態でありたいんですけど。

OIT:ところで、ヨーロッパの映画はあまり観ないですか?
大畑:観ますよ、ゴダールとか!

OIT:微妙な言い方ですね。ヌーヴェル・ヴァーグは一通りとか、先日亡くなられたアンゲロプロスとかは見てるという感じですか。
大畑:観てますね、教養として観るという感じにはどうしてもなってしまいますが。

OIT:批評を読んだりしますか?蓮實重彦さんとか。
大畑:映画美学校に入るまで読んでなかったんですけど、美学校に入ることになって、やばいと思って読み始めました。そのころは妙な偏見を抱いてて、美学校に入るような人はみんな読んでるものだと思ってました。でも実際は悪い意味での教養主義のような人がいる学校ではなかったですね。

OIT:なるほど。美学校の講師はどなたでしたか?
大畑:古澤健さん(『love machine』『アベックパンチ』『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』『オトシモノ』『ロストマイウェイ』)、最近沢山撮ってらっしゃいます。それと、高橋洋さん(『旧支配者のキャロル』『恐怖』『狂気の海』『ソドムの市』)です。在学中はとても楽しかったです。映画学校っていうのは、出会い系みたいなものですから。人との出会いが楽しかったです。

OIT:では最後にちょっとお尋ねしますが、ご自分の中で特別な映画監督というのはいらっしゃいますか?
大畑:ポール・ヴァーホーヴェン、デヴィッド・クローネンバーグ、ヴァーホーヴェンは中でも、『ロボコップ』(87)、『氷の微笑』(92)、『スターシップ・トゥルーパーズ』(97)あたりですね。

OIT:『氷の微笑』は素晴らしいサスペンスでしたね。
大畑:もう王道だと思うんですよね。

OIT:80年代のハリウッドのプログラム・ピクチャーは王道感があるものが多かったですね、むしろ最近の方がそういうものは少ない。イーストウッドなんかは最近も凄いですけど。
大畑:確かに、『J・エドガー』は素晴らしかったのですが、でも王道感はないですよね、最近は。

OIT:そうかもしれませんね。『果てなき路』の脚本家のスティーヴン・ゲイドスという人が、『J・エドガー』は、ハリウッドのメジャースタジオが作ったアート・フィルムだと言ったんです。確かに、滅茶苦茶贅沢なアートフィルムなんですよね。
大畑:壮大な自主映画みたいな感じなんですかね〜、全く羨ましい限りです。

OIT:もうあれほどのキャリアの人ですから、怖いもの知らずですよね。『果てなき路』はどうでしたか?僕は2回観ちゃったんですけど。
大畑:僕も2回観ました。

OIT:いやー、そうですよね、1回ではわからないので。まあ、でも2回観て、考えていくと、ちゃんと辻褄が合うようにできてる。
大畑:そうですよね、2回目観るとわかるって感じですよね。

OIT:リンチの『インランド・エンパイア』なんかは、そういう部分を投げっぱなしにしてしまったようで、僕はダメだったんですけど、『果てなき路』はちゃんと脚本を作ってますよね。そういう意味で『へんげ』もちゃんとしてるなと。
大畑:いやー、真面目にやってます。

OIT:真面目じゃなさそうなんだけど、ちゃんと真面目に作ってるという。ええっ、こういう感じなのかーって観ていると最後には泣いてしまうという、いい映画だと思いました。
大畑:ありがとうございます(笑)。

OIT:次の作品も楽しみにしております。ありがとうございました。

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