OUTSIDE IN TOKYO
OHATA HAJIME INTERVIEW

大畑創『へんげ』インタヴュー

2. 観る人の時間を奪ってまで、観て頂くわけですから、
 自分のつまらない経験を見せても喜んでもらえないとおもった

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OIT:役者さんも、映画美学校繋がりですね、講師だった大工原正樹監督(『姉ちゃん、ホトホトさまの蟲を使う』)の作品(『赤猫』04:予告編)に出ていた森田亜紀さん。最初にキャスティングで決めたのは森田さん?
大畑:そうですね、シナリオを書いてる段階で、こういうキャラクターの人やるなら森田さんだよなっていうのがあったんです。だからシナリオは、ほぼアテ書きです。

OIT:素晴らしかったです。
大畑:本当に森田さんの力なんですよ。

OIT:なんか官能的な人ですよね。
大畑:それをもろに出してるわけではないのに、何故か。

OIT:なんでなのか分んないけど。
大畑:たぶん衣装の力が大きいと思います。ほぼ森田さんの私物を使わせてもらったんですが、持ってこられた衣装が身体にフィットするものが多くて。たぶんシナリオを読み込んだ上で持ってきてくれたんだと思うんですよ。それと、なぜか官能的な印象が滲み出てしまう方なんだ、ということもあるでしょうね。

OIT:『赤猫』もちょっとそういう感じ?
大畑:何か抱えてる人っていいますか、パッと見は分らないんだけど、実は中に何かを抱えていてそれが徐々に明るみになってゆく、みたいなキャラクターを演じられてたんです。

OIT:もうすばりこの方だと。
大畑:そうですね。

OIT:このへんげする男性の相澤(一成)さんは、ひょっとして、クローネンバーグの『ザ・フライ』のようなのを撮りたいということを監督が考えていたから、それで背が大きい人、ジェフ・ゴールドブラム的な男性っていうことで相澤さんになったりしたのですか?
大畑:そういう人を探してた時に、女優の中原翔子さんという方と知り合いで、その方が僕に紹介してくれたんですよ。中原さんとは結構長い付き合いなんで、僕の好みをよくご存知で、よくぞ紹介してくれましたっていう感じですぐ決めちゃいました。

OIT:あとこの信國(輝彦)さんという方は?
大畑:信國さんは僕が『大拳銃』を上映している時に観に来てくれて、そこで飲み会で知り合って、まあなんか胡散臭い人だなあって(笑)。もちろん実際はそんなことはありませんけど。

OIT:この人が凄く面白くて、ちょっとイントネーションが独特で、なんか文芸映画かな?みたいな。この人がへんな雰囲気を部屋の中に持ってきちゃったのかなっていう。
大畑:声の感じが妙で面白いですよね。

OIT:そう、ユニークというか、一回見たら忘れないっていう感じの人。そういうキャスティングもはまってたと思うんですが、やはり映画の作りが面白くて。色んなジャンルの映画が入っていて、それが変化(へんげ)していくんですね。
大畑:それはシナリオ書いてたらこうなっちゃったっていう感じなんです。商業映画じゃないんで、明確に自分の中でジャンルを決めて、この映画はホラー映画だっていう売り方とか全然考えないじゃないですか。なので、自分の好きなものをどんどん入れてったらこうなっちゃったっていう感じなんですよね。

OIT:好きなものがね、そういう感じは分りました(笑)。
大畑:ただ自分のエゴで自分のオタク的な感性を入れるみたいな感じじゃなくて、なんていうんですかね、胡散臭い言い方ですけど、この映画が書かせたみたいな感じはありますね。

OIT:それは分ります。映画観終わった後、すぐに大畑監督が書いた「制作意図」を読んだんですけど、面白かったのが、ちょっと小さい書き方なんですけど「自主映画なんて作る時点で迷惑だ」って書いてらして、そういう感覚をお持ちなんだな、その慎ましさが素晴らしいなと思ったんです。それが自主映画だから自分の内面が出ちゃうとかじゃなくて、自主映画だからこそ観る人を楽しませなきゃいけないっていうことの裏返しの、まあ告白みたいな感じで、ちょっと感動してしまったのです。その感覚があるから、やっぱり映画はエンターテイメントという感じなわけですね。
大畑:そうですね、観る人の時間奪ってまで、観て頂くわけですから、なんか自分のつまらない経験を見せても喜んでもらえないかなっていうのがあるんで、どうせならこんな爆発とか、普通に生きてたら見れないようなものを見てもらった方がいいかなあと思うんです。

OIT:そういうのが根本にあるから映画がどんどん遠くまで行くというか、観ているとどこまで行くんだろうっていう面白さがあって。脚本が結構しっかり作られてますね。
大畑:そうですね、出来る限りは。

OIT:じゃあ、現場でアドリブとかはあんまり?
大畑:ああ、どうかな、そこまでやってる暇がなかったっていうのもあるんですけど、アドリブとかは積極的にやるほうではないので、ほとんど脚本通りですね。ただ、現場で役者さんやスタッフが提案してくれたものはどんどん取り込んでいきました。

OIT:撮影はどれくらいの期間でしたか?
大畑:ドラマの部分が8日間、特撮部分が1日数カットくらいしか撮れなくて準備に時間がかかるので、5日間くらいかかったと。

OIT:最初にドラマ部分を撮って。
大畑:そうです。

OIT:CGは使われてますか?
大畑:CGは全然使ってないです、全てアフターエフェクトによる合成です。

OIT:それが、監督のやりたいスタイルなんですかね。
大畑:今回の映画については特撮が最善の策だろうというのはありました。実際にカメラの前に実物を置いて撮るってゆう。でももちろん、面白いCGの使い方を思いついたら使いたいです。ただ単にCGの見本市みたいなのは違うと思うんですけど、CGは使わない主義というわけでは全然ないです。


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