OUTSIDE IN TOKYO
HYUNRI & M. YAMAMOTO INTERVIEW

玄里(ヒョンリ)『水の声を聞く』インタヴュー with 山本政志

10. グザヴィエ・ドランって、大好き(玄里)

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玄里:あと、カナダ映画だけどフランス系カナダ人のグザヴィエ・ドランって、大好き。
OIT:グザヴィエ・ドラン、きた!
山本政志:俺、一番嫌いな感じかも。
玄里:最近の監督ですよ、『マイ・マザー』(09)とか。
山本政志:大嫌い。
玄里:えー、なんでですか?私は大好き。
山本政志:ああいう線の細い映画大っ嫌いなんだよ、スタイルだけしか見えないもん。
OIT:『トム・アット・ザ・ファーム』(13)っていう10月に公開される、本人が主演している作品があるんですが、それ観ると監督の印象も変わるかもしれませんよ。
玄里:(今年のカンヌ審査委員賞を受賞した)『Mommy』も凄くいいらしいですよ。
山本政志:最近のカンヌは、小さい日常世界をどう表現するか、みたいな事に埋もれてるような感じがする。作り手が、自分の人生を切り開きながら作品を生み出すってのは、まぁいいか、みたいな。彼の作品は、まさにそれ。耐えられなかったんだ、俺、久々に映画観ながら文句言った、馬鹿じゃないのって。
OIT:『わたしはロランス』(12)はちょっと格好付け過ぎな感じはありましたけど。
玄里:まあ、ちょっと長かったし。
山本政志:ロジックで弁護してどうのこうのいうじゃん、主人公の行動を。ああいう馬鹿な、下品な映画作りは無いだろ。そういう映画作りが嫌いなんだよ、フランスの。インテリジェントに物事を進めていく、肉体より前にインテリジェンス、逐一口に出してくよくよ、くよくよノー書き垂れて悩むわけだよ。
玄里:でも画が綺麗でしたよ。
山本政志:その画も軽薄でさぁ。何から何までムカついちゃったよ、俺は。なんか、こじゃれ過ぎちゃってるんだよね、うんこ投げたくなっちゃうんだ。
玄里:(笑)今度、来日するらしいですよ。
OIT:監督対談してほしいですね(笑)。
山本政志:何も話すことないだろうな。やっぱ、うんこ投げるな(笑)。
OIT:以前、本人から聞いたことなんですが、ホン・サンス監督は、素人の表現は“屈曲”していて、伝えたいことを正確に伝えることが出来ないから、映画では使わないと仰っていたんですが、山本監督は結構素人を使いますよね?
山本政志:俺は結構使うよ。素人は、演技の幅がないんだよね。幅が小さいから限定された芝居しか出来ない。でもそこを追求していくと、技術ではない存在とかが出てくるから面白いよね。“型”ではないものが出てくる。俺は、ドキュメンタリーとか、結構生っぽいのが好きだから、そういうものをこっちの世界(フィクション)に頂こうかなっていうのはあるよね。それを役者の芝居と混ぜるっていうのは、ずっとやっていきたいね。今回でも、中心の役者以外は、ほとんどアマチュアみたいなもんだから。一応、その人たちのキャラクターを見てて、この役かなってはめてみると、大体ハマってきてはいるよね。あの悪役の高沢役の彼(小田敬)いるでしょ?俺は、彼なんか大好きだね。あと、今回は、俺の母親が出てるの。全盲の人いたでしょ?ああいう人はやっぱり(スクリーン)に写ると素晴らしいよね。ああいうのは、やっぱり強いんだよね。ああいう入れ方は好きだね。
OIT:今回、玄里さんの演技を見て、これはいけると確信した瞬間とかはありましたか?
山本政志:最初からいけると思ってた。というか、玄里の存在自体にインスピレーションを受けて脚本を書いて、こういうシーンを作ろうか、ああいうシーンを作ろうかって考えたわけだから。あの眼帯のシーンあったでしょ?あそこは、眼帯あり、なしで両方撮ろうかなって思ってたんだけど、着けてみたら、もうこれしかないと。
玄里:私も、着けたい!って言ったんです。
山本政志:それを着けることで、ミンジョンは大変なことになるんだけどね。
OIT:あの“事件”が起きたから眼帯を着けているという順番ではなくて、眼帯を着けることを決めたから、あの事件が起きざるを得なかったという順番なわけですね。
山本政志:そうそうそう。その事件についてはまだ見えてなかったからね。眼帯をつけることでそれが見えてきた。
OIT:“画”から発想していったと。眼帯はインパクトありますね。
山本政志:いいでしょ?凛々しいよね。その事件があったからといって、くよくよしていないというか、その外側にいるという感じ。
OIT:その先がどうなるか、何も予測させない終わり方でしたね。
山本政志:そうだね。ミンジョンはそのまま韓国に残るのかとか、お父さんもどうなったかわからないしね。
玄里:私は、最後のラストシーンのあれで、ハッピーエンドになってるんじゃないかなと思ってるんです。見た人がどう思うか気になるので、色々な人の感想を聞いてみたいですね。
山本政志:救いがない、っていう人もいるけどね。そういう人は何見てるのかな?って思うけどね。表向きは、映画って色々な解釈あっていいよ、って言うけど、心の中では、それはねぇだろ、バカ!って思ってるね(笑)。
OIT:救済がある、ないっていうことよりは、今の時代と監督が正面から向き合って出て来た映画だなという感じがしました。やはり、あまり明るくハッピーな時代ではないから。
山本政志:自分としては結構お笑いの要素も入れたつもりではあるんだけどな?!
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