OUTSIDE IN TOKYO
HONG SANG-SOO INTERVIEW

ホン・サンス『3人のアンヌ』インタヴュー

2. 修士論文のために作った映画を見直したことがありましたが、今の私の映画と同じでした

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Q:(監督は)アメリカで美術の学士号、修士号をとっていますが、この時の研究テーマを教えて頂けますか?映画なのか美術なのか。
ホン・サンス:美術です。修士をとったのは美術一般ではなく映画ですが。私が通った学校は美術一般では有名な学校ですが、私は映画学科でしたので、映画で美術修士をとっています。

Q:具体的な研究テーマは?
ホン・サンス:特別に修士論文を書いたのではなく、学期ごとに映画を作るんですね。そうして学期ごとに映画を作り、それに併せて修士号をもらったので、特別に論文を書いたわけではありません。

Q:そうすると大学で作られた映画で発表されてないものもあるわけですね。
ホン・サンス:その時に私の作った映画は、頭の中だけで考えた映画で、私はその頃、本屋とか図書館によく行っていて、そこで得た本の知識で作った作品なんです。作ってからすごく長い時間が経って久しぶりに私の卒業制作、修士論文のために作った映画を見直したことがあったんですけど、(それが)不思議と今の私の映画と同じだったんです。「同じ」というのは、今の私の映画のエッセンスが含まれていて、それが不思議な気がしましたね。

Q:差し支えなければその時の評価を教えてください、修士論文の評価、映画の評価はどうだったんでしょう?
ホン・サンス:アメリカでもその映画を観たのはその学生の時しかないのですが、私の担当の教授は大好きだと言ってくれました。

Q:発表する気は全くないのでしょうか。どこかで観ることはできませんか?
ホン・サンス:ないでしょうね(笑)。

Q:ちなみにそれはどういう設定ですか?
ホン・サンス:その時に撮った映画の一つに『ファクトリー』という映画があったのですが、それは3分くらいの映画で、どういう映画かと言うと、私の美術学科の知り合いにシルク印刷をしている子がいて、彼のいる工場に、じゃあ、お前の工房に映画を撮りに行くから、と言って彼がシルク印刷をしている様を映画に撮って、それをその後、私がサウンドエフェクトとして騒音を作って、映画にのっけたんです。それは日常的な労働者がシルクスクリーン印刷をするリズムとそれに補正されたサウンドエフェクトと騒音がのっかった映画で、たとえばシルク印刷する時のペンキの缶があるのですが、その缶を持ち上げる時に音が出ますね。もちろん置く時も出るけど、持ち上げる時にも音が出たり、そういう作品です。面白い作品ですよ。

Q:そのサウンドエフェクトはブレス音的な感覚ですか?
ホン・サンス:ブレス音的と言えるかもしれませんし、私がたぶん、その当時に意図したもの、すごく日常的な動きの映像と、それに対して日常を超えた騒音を加えるというものです。


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