OUTSIDE IN TOKYO
SETA NATSUKI INTERVIEW

瀬田なつき『PARKS パークス』インタヴュー

5. いわゆる回想シーン的なことをやらずに、どうやって過去と現在を表すか

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OIT:あの真っ白い空間ですね。なるほど、それは面白い。
瀬田なつき:それは、流石に気づいてくれませんが。

OIT:『PARKS パークス』においては、過去として描かれていた部分っていうのは、今回の瀬田さんの描き方を見ると、過去は新聞だったり写真だったり手紙だったり、オープンリールだったりして、具体的な“モノ”に置き換えられていて、素の映像で描いてる部分はほとんど起こらなかったかもしれないように描かれています。
瀬田なつき:そうです、ハルのイメージを、今回永野さんが凄く上手に演じてくださって、とても不思議な説得力を作ってくれてました。普通だったら、過去に行ったらわっと驚いたり、急にそこにいてどうなの?みたいになるところが、結構ふわっと入ってきて、そのまま馴染んでるっていう(笑)。回想とかそういう形じゃなくて過去を表せたら面白いなって思って、ここの橋を渡ったら過去に行ったりする、そういうことでいいんじゃないかって。

OIT:そうですね、橋ですれ違ったり、最後の方は純もすれ違ったりするわけですよね。切り返しショットの場合もそうですけど、あんまり紋切り型的なことをやらないようにしてます?
瀬田なつき:そうですね、いわゆる回想シーン的なことをやらずに、どうやって過去と現在を表そうか?っていうところで、もうふわっと地続きでいっちゃったらいいんじゃないかっていうのを、そのまま見せてしまったっていう。

OIT:それで上手くいくんじゃないかと思ったんですか?
瀬田なつき:やっぱり本当の過去を正確に作りだすと細かいところでこの橋はこんな感じじゃなかったとか、時代考証を凄く細かくみんなで詰めていっても、逆に面白さを狭めちゃうんじゃないかっていう感じがして、それならみんなハルがイメージした過去っていうことで、過去っぽいもの、60年代っぽいものを、音楽もそうですし、美術とか衣装とか髪型などもイメージの過去っていうことで、その方が、想像が広がるだろうと。

OIT:60年代っていうのは、普通に年齢を計算して出てきたものですか?
瀬田なつき:そうです。みんなで喋っていて64年っていうのが出た時に、音楽監修でトクマル(シューゴ)さんも入っていたのでどうだろうって聞いたら、60年代前半と後半だと音楽の種類がビートルズ上陸で変わるからどうしようという話になって、ちょっとずつ60年代前半にしましょうかっていう流れになりました。また細かくすると時代考証で、その頃の井の頭公園にはこれがなかったという話になっていくので、そこは過去っていうことにしようと。

OIT:先ほどの話に出た物語がレイヤー的になっていることも、過去の描写を“モノ”として、実際の映像以外のものにまとめていることで、複雑な語りにも関わらず、そこがちゃんと整理されてるから観ていてモヤモヤした感じが残らない、サラッとというのは褒め言葉だと思うんですけど、サラッとしていて、聡明さを感じるわけです。それでも複雑な部分がちゃんとあるっていうところが良いですよね。特にチャプター7のライブハウスのシーン、他のメンバーがお腹を壊して、2人でステージに立つシーンとか凄かったです。
瀬田なつき:そうですね、一番時間がなかった日です(笑)。

OIT:見ていて痺れました。ステージが暗転して橋本愛さんも別人のように変わる場面でしたよね。
瀬田なつき:そうです、そこを起点として、何かしようっていう話はして、結構色々やりました、音とか。あそこが一番チェックした時に音が大きかったです。一番音が出せるし、2人で演奏はしてないんですけど(笑)、結構何回も撮ったんです。人がいなくなったバージョンとか、人がいるバージョンとか、橋本さんは呆然として意識がどっかいっちゃっていて、染谷くんはあんまり声は入ってないんですけど、ずっとラップをし続けてくれてて、本当にごめんなさいありがとうございますっていう感じでした(笑)。


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