OUTSIDE IN TOKYO
Mike Mills INTERVIEW

マイク・ミルズ『人生はビギナーズ』インタヴュー

3. スケートボードのグラフィックから始まり、
 今では映画を撮っているけど、そんなに違いはない。
 僕なりの、社会の一部になれる方法なんだ

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Q:自分の人生で受けた一番の影響は?
MM:僕は本当にたくさんのものに影響を受けていて、それに答えるのはすごくむずかしいよ。でもあえて言うなら、ヴィジュアルアーツを続けていく上で一番大きな影響は音楽だね。最初に好きになった音楽はパンクロックだった。ロスのハードコアバンドで、例えばブラック・フラッグからトーキング・ヘッズ、バズコックス、クラッシュとか。音楽は今でも書くときの力になる。あらゆる意味で助けになるし、本当に音楽はたくさん使っている。

Q:なぜ今の仕事を選んだのでしょう。
MM:うーん、どうだろう。今でもそれを知ろうとしているところかな。子供の頃からアートをやり始めてから、いま映画に移り始めるまで、それが自分が一番得意なことだったから。自分が世界に貢献できること、自分が世界にコミュニケートできることだから。自分がその世界の一部であると感じることができるから。スケートボードのグラフィックから始まり、今では映画を撮っているけど、そんなに違いはない。僕なりの、社会の一部になれる方法なんだ。

Q:一番好きな映画は何ですか?
MM:この一本とは言えないし、週に3、4本は見ているから。でも最近見た映画でよかったのは『カサブランカ』。ストーリーテリングの要素が詰まっていて、とても勉強になるね。それから70年代初めのヴィム・ヴェンダースの映画で『都会のアリス』。その2本が現時点での好きな映画かな。

Q:机の周りにあるもので好きなものを教えてください。
MM:なんだろう。ひとつは窓かな。ここから臨めるシルバーレイクの眺めは一日中見ていられる。今、見回してるけど、本に囲まれている。スイス人アーティストのフィシュリ&ヴァイスの本があって、彼らの本は大好きだからそれにしよう。そして犬のビリーが机の下の僕の足下にいるよ。彼女は一日中一緒だ。だから彼女にしよう。

Q:最近あなたの興味を引いているのは何でしょう。
MM:まあ、よく森に行くよ。僕がよく行く場所は野生の状態が残され、野生の鹿や熊や七面鳥などたくさんの動物たちがいる。その森へ行くととてもいい状態になる。ホンマタカシと、ロスのマウンテンライオンについて仕事をしてきた。実際に棲息しているんだ。動物愛護はずっと大事だ。犬と一緒に暮らし、彼女を完全にリスペクトしながら同等な存在、仲間として生きる。僕の所有物ではなくてね。そういうことが大事かな。

Q:グラフィック・デザイナーとして働いたあなたが映画を撮りたいと思うようになった理由は?
MM:グラフィック・デザインの世界に入ったのは、まずアートスクールに行ったから。アートスクールは特殊さが重んじられ、ある意味、エリート意識が強い。グラフィックへ行ったのは、より日常のものだから。リアルでふつうでパブリックな世界にある。実際にグラフィックを始めたらとても満足して、チャレンジングで重要だし、コマーシャルで日常的なコンテクストにある。それからエロル・モリスの『シン・ブルー・ライン』を見て、それはアート界ではなく、コマーシャルなエンタテインメントの世界で続ける方法として訴えるのを感じた。映画作りが、自分の好きなアートと同じくらい美しく革新的なだけでなく、チャレンジングに思えたんだ。

Q:自分の経験をベースに自らが書くという体験はどうでしたか?自分の記憶や感情を映画化するのに何に一番気をつけましたか?
MM:書く上で一番に気をつけたのは、ナルシスティックになりすぎないようにしたことかな。事故憐憫でなく、自分の感情を大事にし過ぎないように。自分が書いているのはあくまでストーリーであり、人に対してコミュニケートしなければならない。最初はドキュメンタリー映画に興味があったんだ。自分が見たこと、自分の知っている人たちについて書くことで、そうしたドキュメンタリー的な傾向を続ける目的でやってきた。自分が興味を持つのは、自分の父が感じていたとてもリアルな欲求や不安だ。自分や自分の世代の人たちが感じていた欲求や不安についても。だから僕が始めるきっかけとなったドキュメンタリー的要素にとても似たノリがあるんだと思う。

Q:根本的な質問ですが、映画はあなたにとってどんな意味を持つのでしょう。
MM:うーん、映画は人と会話する方法だと思う。大勢の知らない人たちと話す方法。他人と何かを共有し、コミュニケートするための手段。ビジュアルものでも、映画史的なもの、美的なものよりも他の人たちと話す方法、繋がる方法だと思う。


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