OUTSIDE IN TOKYO
KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

工藤将亮『遠いところ』インタヴュー

3. 沖縄へのもう一つの入り口、細野晴臣と久保田麻琴の音楽

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OIT:この映画は沖縄で先行上映されていて、ヒットしているとのことで、とても素晴らしいなと思ったのですが、監督としては、沖縄の観客にこの作品を見てもらうということに関して、特別な感情はお持ちでしたか?
工藤将亮:いや、やっぱり怖かったですよ。批判もあるとは思うんです。僕がヤマト(内地)だってことや、メイン3人のキャスティングを沖縄でやらなかったということもある。もちろん沖縄でキャスティングしなかった理由はありますが。こういった題材をウチナンチュじゃない僕がやるのもかなり危険なことだと思いますし、スタッフもキャストも沖縄の人がたくさんいましたし、攻撃されるのなら自分ひとりを攻撃してくれって思ってましたし…そういった意味でもこの3人はよくやってくれました。でも公開までの間、宣伝の方々を始めとしたスタッフの皆さんが丁寧に私たちの趣旨を伝えてくださったのが大きかったのかなと思っています。

OIT:具体的な場面について、一つお聞きしたいのですが、主人公アオイの親友海音(ミオ/石田夢実)が屋上に一人でいる場面がありますね。あの場面では、彼女が具体的に何かをするわけではないのですが、あの画と音の演出によって、不吉な事態が起こるということを観客の誰もが理解してしまうわけです。特にあの音が素晴らしいと思ったのですが、あれは何だったのでしょうか?作品全編に亘って、あまり見慣れないロケーションの沖縄の美しい風景が撮れていたと思うのですが、この場面は特に強く印象に残っています。
工藤将亮:ありがとうございます。あの場面は音楽の茂野さんと打ち合わせをして、グラスハープの音を使っています。アオイとミオの気持ちがすれ違った瞬間を音楽で表現したかったんです。ロケーションに関しては、ほとんど住み着いて取材していましたから、ロケハンというような感覚で撮影場所を探したわけでもなかったんです。取材しながら、ロケハンしながら、住みながらという感じでした。

OIT:もう住んでいたわけですか。
工藤将亮:メインの3人には撮影の1ヶ月以上前から役作りを兼ねて住んでもらいました。主人公のアオイはロケセットに1ヶ月前からずっと住んで、生活をしてもらいました。

OIT:なるほど。ところで、沖縄で撮られたフィクションの映画で強く印象に残っている作品はありますか?
工藤将亮:高嶺監督の『ウンタマギルー』(1989)ですかね。特に『パラダイスビュー』の時の細野晴臣さんの音楽や、久保田麻琴さんとか。僕は音楽が好きなんで、そういうカルチャー的な入口から沖縄に入って行ったというのもあるんですよね。(編集部註:『ウンタマギルー』の音楽は上野耕路)

OIT:それは大きいですよね。とてもよくわかります。
工藤将亮:久保田麻琴さんとか大好きで、90年代はレコードを買い漁ってました。

OIT:この作品にもっと音楽を入れることは、あまり考えませんでしたか?
工藤将亮:そうですね、この映画は作品自体の構成を音楽的な流れで作っているので、それは難しかったです。一つのゆっくりした大きな流れで序章が始まって、という音楽的な作りをしちゃっているので、音楽は乗せにくいなと思いながら作ってました。音楽が乗るようなカッティングとかが出来れば、多分乗せていたと思うんですけどね。


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