OUTSIDE IN TOKYO
AHARON KESHALES & NAVOT PAPUSHADO INTERVIEW

アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャド
『オオカミは嘘をつく』インタヴュー

4. 私にとっては、映画を観て批評を書くということは
 何にも代え難い情熱を燃やせる分野なのです(アハロン・ケシャレス)

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OIT:最初に子供たちがかくれんぼをするシーンがありますね。この映画は、赤ずきんの童話が元になっているということですが、その話は、ご両親から聞かされたのですが?
アハロン・ケシャレス:両親からは沢山のおとぎ話を聞きました。少し残酷で暗く、怖いおとぎ話を聞かされたのも覚えています。健やかに寝入って欲しい子供に読み聞かせるのには最悪な種類のものだと思うのですが、なぜなら、大人になって、そのとき襲いかかって来たオオカミや魔女は、ある意味、見知らぬ人や児童性愛者に置換えられることに気がつきます。要するに地球に生をうけて年端もいかぬうちに、凶悪犯の物語にさらされるようなことになっている訳です。聞きながら眠りにつく夢物語やファンタジーの一部として。それなのに親は子供が、恐れを知らない、健やかで、真っ当な人間として育つことを期待するんです。そのことを改めて考えたとき、復讐の物語を作ろうと思いつきました。恐ろしい物語を読んで聞かせたが為に、その子供はクレイジーな映画監督に成長しちゃって、『オオカミは嘘をつく』という映画を撮ったりする訳です。これが大人の為の寓話を作ろうと思ったきっかけです。オオカミも、赤ずきんちゃんも、ヘンゼルとグレーテルのパン屑も登場します。眠りの森の美女を思わせるシーンもあります。多様な寓話に繋がる内容が沢山見つかると思います。
OIT:ご自分にお子さんができたら、その残酷なおとぎ話は話して聞かせると思いますか?それとも話しませんか?
アハロン・ケシャレス:まずこの映画『オオカミは嘘をつく』を見せますね。砂糖菓子で包んだ現実を語ったりはしません。(笑)冗談です。そうですね。両親と同じようなことをするでしょうが、もう少し美しいダンボの物語を読んで聞かせたりするかもしれませんね。
ナヴォット・パプシャド:おとぎ話だけではなく、ディズニーやピクサーが作る映画にも残酷なのはありますね。子供は完全に理解していないかもしれませんが、大人として見ていて、何故子供の映画にここまでの残酷さを盛り込むのだろうと不思議に思うことがあります。『トイ・ストーリー3』(10)なんて、ホラー映画ですよ。火事になって強制収容所に送られたりするんですから。クレイジーですよね。といいつつ、子供は大人が思う程、幼くないのではと思うこともあります。賢くて、全てを理解している。子供を物語から守ることなんてできないのならば、いっそ明け透けに開示してあげた方がいいかもしれません。映画のバイオレンスなんかを下手に隠すよりもね。よいガイダンスになるかもしれません。私たちだって幼少期に観るべきではないかもしれない『エクソシスト』(73)や『エイリアン』(79)なんかを随分小さい時に観ましたから。保護者と一緒にみるのがいいと思いますね。
OIT:アハロンさんは、もう書くことはおやめになったのですか?批評はもうしないのでしょうか?
アハロン・ケシャレス:いいえ、まだ書いています。私のフェイスブックは殆ど批評の場になっています。批評を書くのを忘れることはできません。台本を一生書き続けることもできますし、ナボットと映画の監督もするでしょうが、私にとっては、映画を観て批評を書くということは何にも代え難い情熱を燃やせる分野なのです。いつでもそれが一番ですね。フェイスブックをその発露として使用しています。残念なことに要望もありますのでね。(笑)
OIT:ではFacebookで読めるんですね?
アハロン・ケシャレス:もちろん!
ナヴォット・パプシャド:俳句みたいなんですよ。短い詩のような批評です。
アハロン・ケシャレス:確かに。とても短い。禅のような感じです。
OIT:面白そうですね。そのうち本にしたいというようなご希望はあるんですか?
アハロン・ケシャレス:それは考えていませんね。これまで書いた殆どの批評は既に出版されているんです。イスラエル最大のエンターテイメント紙とウェブサイトに批評を寄稿していたのですが。壮行の贈り物として本にしてくれたんです。これについてはナボットの陰謀説が濃厚なんですがね。批評家をやめさせて台本を書かせる為にナボットが無理矢理、批評を本にまとめて一区切りつけたのではないかと思ってるんです。その時のものが批評家として公に書いた最後の文章ですね。いい批評は全て本にまとめてくれたので、別のことを始める心の準備ができたような気がしました。


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