OUTSIDE IN TOKYO
AHARON KESHALES & NAVOT PAPUSHADO INTERVIEW

アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャド
『オオカミは嘘をつく』インタヴュー

3. 教員というものはその生徒から最も多く学ぶものです(アハロン・ケシャレス)

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OIT:学生たちとプロジェクトに取り組んでいるとのことですが、大学で教えてらっしゃるのですか?その辺りの背景を教えて下さいますか?
アハロン・ケシャレス:残念ながらもう教鞭はとっていません。映画の仕事で世界中を旅する必要ができて本業はできなくなりました。私たちは大学で出会いました。私は映画学の教授で、彼は優秀な教え子でした。生意気な生徒で、初めて教室に入って来た際にサングラスをかけていたのです。彼は挙手して、授業中もサングラスを外さなくていいかと聞いたので、好きにしていいと応えました。こいつとは面白い関係になるだろうと思いましたね。それから仲良くなりました。彼のクラスを担当している間に映画について多くを語り合いました。一緒に映画を観ると似たような感想を持つことが解りました。同じような問題点を見いだし、同じような箇所を好ましいと思うんです。最初の単位を取るときは指導をしました。最初の映画をつくる時にも手を貸しました。彼の映画をプロデュースするように依頼され、受けたんです。次のステップとして何をするべきだろうか、と彼に聞かれた時に、おとぎ話を題材にした映画を撮ったらどうかと勧めました。「それはいい考えだ!脚本を書いてくれる?」と言われましたが「いやいや、本業があるから無理だね。私は教授で批評家なのであって、いつも通りの静かな生活をおくりたいから。」と断りました。そうしたら彼はヘンゼルとグレーテルの物語に出てくるように、パン屑を撒いて私をおびき寄せたんですよ。
当初は台本だけ書いてくれといわれ、手伝いました。そのうち「脚本を書いてくれたんだから、そのキャスティングに手を貸してくれ」といわれ、一緒にキャスティングしました。そしたら、リハーサルをやろうといわれ演技のリハーサルに乗り出し、気がついたら彼と一緒にメガホンをとるようになっていて、今の関係が生まれたんです。
OIT:演出についてですが、現場での分担などがあったのでしょうか?
アハロン・ケシャレス:はっきりとした線引きはありません。どちらかというと2人の共同作業です。モニターの前に2人で座り、シーンを確認する。2人とも問題なければOKする。どちらかが引っかかると、担当部やディレクターと話すといった具合です。こうした作業をふたりで行うことが、私たちにとってはとてもやりやすかったんです。誰でも好き嫌いはありますが、私たちは共同作業を通じて、監督として共生しているんです。
OIT:現場で全く方向性が合わなくなるなど意見の対立が起こることはないのですか?
アハロン・ケシャレス:そうですね。著しく大変な日であれば15分位やり合うことはあるかもしれません。(笑) でももう10年来の仲ですから、意見の相違はそんなにありませんね。
OIT:兄弟の監督さんは結構いらっしゃいますが、学校の師弟関係から監督になるというのはイスラエルに限らず珍しいと思いますが。
アハロン・ケシャレス:確かに珍しいですね。仰る通りです。生徒と先生の関係というのは、兄弟に負けず劣らず良いものだと思います。お互いに尊敬しあえる存在ですから。特に彼は優秀な生徒でした。非常に尊敬できる人物です。教員というものはその生徒から最も多く学ぶものです。私は映画理論の教授で、それを教えていました。そこから、撮影技術や他の分野に派生しました。ナボットとは良く映画を観に行きました。そして、実際にどのように撮影されているのかといった実践的なことや技術的な内容について2人で話しました。学校では教えないタイプの内容です。学者として知るよりも、より多くのことを映画について知ることになりました。同様にナボットも私の授業で映画の理論やナラティブについて学びました。誰にでも足りないところはあります。私たちはお互いから学ぶことができました。それを双方が認識していれば良い関係が築けると思います。


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