OUTSIDE IN TOKYO
ITAI TAMIR Interview

イタイ・タミール『彼が愛したケーキ職人』インタヴュー

4. 男と女、男と男の愛だけじゃなくて、料理への愛情もこの映画の重要なポイントです

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OIT:イスラエルではどういう風にこの映画は受け止められたのでしょう?
イタイ・タミール:宗教的な方々にどのように受け止めたかは分かりませんけれど、そういう方たちは映画館に行かない人が結構多いので、恐らく、そういう方たちはあまりこの映画を観ていないでしょう。ただ、この映画は宗教的なモチーフやジレンマ、様々な問題を抱えていますけれども、そうした事柄は物語を前に進めるために使ったもので、この映画自体が、宗教的であるか否か、信心深いか否か、といった点を主題として表現しようとしたわけではありません。

OIT:現場では何度も撮り直すことがあったのか、あるいは、撮影は早いのか、その辺を教えていただけますか?
イタイ・タミール:何度もテイクを撮り直すとお金がかかりますから、そんなに時間はかけなかったですね。オフィルは常に自分の欲しいものがはっきり分かっていますから、リハーサルをして、非常にオープンに役者と話し合い、そして、役者に好きなようにやらせるというタイプの監督でした。キッチンの中の、アナトとトーマスのシーンがありましたよね?あのシーンは、ワンテイクで撮っています。

OIT:そのシーンも素晴らしいのですが、トーマスが子どもとケーキを一緒に作るシーンがありますよね、何を見せるかを明確に意識している、あのシーンのフレーミングはとても素晴らしいと思いました。
イタイ・タミール:オフィル自身、今はもうやっていませんが、昔は生活のために料理を教えていたほど料理上手で、パンも作れる人なのです。ですから、このトーマス役のティム・カルクオフを2ヶ月間ベーカーリーに修行に送ったんです。そこでティムも本当にプロ並みのテクニックを身につけました。実際に生地を練るシーンや、ものを切ったりするのは彼の手で、手を入れ替えたりして撮ったわけではありません。ティムは、本当に自然にパンやケーキを作っていたのです。

OIT:それでひとつ謎が解けました、ケーキやパンが凄く美味しそうに見えたので。
イタイ・タミール:男と女、男と男の愛だけじゃなくて、料理への愛情もこの映画の重要なポイントです。

OIT:オフィルとのコラボレーションは続きますか?
イタイ・タミール:はい。実は、次の作品は『AMERICA』というタイトルで、もう既にオフィルは脚本を書き上げています。



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