OUTSIDE IN TOKYO
ITAI TAMIR Interview

イタイ・タミール『彼が愛したケーキ職人』インタヴュー

3. コシェルの認可を与えるのはラビだけれども、
 その権限は宗教的な人だけにあるべきではないと思っている人も多いのです

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OIT:なるほど、完成に至るまで、長い道のりがあったのですね。ところで、この映画の舞台はエルサレムとベルリンですが、実際に撮影はエルサレムとベルリンで行われたのですか?
イタイ・タミール:ええ、そうです。

OIT:エルサレムで撮影する時に、規制はないのでしょうか?
イタイ・タミール:それ程特別なことはありません。エルサレム・ファンドという地元のファンドがあって、脚本を読んで気に入れば、エルサレムで撮影をするのであれば資金も出してくれるのです。

OIT:この映画の中で、パンやケーキを焼くという行為が、イスラエル社会では特別な許可がいるという風に描かれていましたが、その背景を教えていただけますか?
イタイ・タミール:“コシェル”のことを仰っているのだと思いますけれども、“コシェル”は国がライセンスを与えているものではなく、宗教的なリーダーであるラビが、教典の食物規定に則って食料が作られているかどうかをチェックしに来るものです。国や政府というレベルの問題ではないのですが、ラビが“コシェル”だと認定すればスタンプが与えられ、一定数の客はそのスタンプのある場所でしか食べないということです。イスラム教の人は豚を食べないという話がありますけれども、ラビの人が来たら豚は出しませんっていうジョークもあるんですよ。

OIT:映画の中ではそれがちょっと理不尽なものとして描かれていましたね、そういう視点が選択されていたと思いますけれども、それはイスラエルに住んでいる多くの都市生活者はそういう風に思っていると考えていいのでしょうか?
イタイ・タミール:食べるなら“コシェル”という人もいますけれども、映画の最後で認可が取り消しになりますよね。その時にケーキを買いに来たお客さんが「これコシェルですか?作ってるのはドイツ人ですか?」と聞きます。アナトは、これはコシェルだ、認可はないけれどもコシェルだって言うんですね。乳製品とお肉を一緒にしないとか、色々なルールがありますけれども、最終的にはそういう風に認可はなくてもこれはコシェルだっていう風に思う人たちもいて、認可を与えるのはラビだけれども、その権限は宗教的な人だけにあるべきではないと思っている人も多いのです。



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