OUTSIDE IN TOKYO
ANDO SAKURA INTERVIEW

安藤サクラ『トルソ』インタヴュー

2. 『トルソ』では、山崎さんが“撮って”いるというより、彼が“見て”いる感じでした

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OIT:お姉さんは、映画を撮る側に行きましたけど、自分はやっぱり演技だという思いがあったんですか?
A:あれ(姉の安藤モモ子の監督作『カケラ』)を見て、やっぱりすごいなと思います。監督ってぜんぶ自分で決めて、自分の世界があって、いろんなスタッフがいたり、出演者にもいろんな指示を出すわけじゃないですか。それをまとめて、自分の意志を貫くところは貫いて、柔軟になるところはなって。でも結局は姉の作品なわけですよね。全てに責任を持ってやってるし、宣伝にしても自分で動いて、全てに自分が責任を持ってやっている姿を見て、本当にすごいなと思います。監督なんて私には到底無理です。

OIT:でも絵を描くことが好きだということは、自分で作り出す術も持っているわけですよね?
A:はい。それでも自分に自信がないですから。

OIT:まだ絵は描いていますか?
A:描くってほどじゃないですけど、ずっとスケッチブックを持っている時期もありましたね。最近はもう、落書き程度ですけど。

OIT:他に興味の対象はありますか?
A:あっ、私、料理は大好きです!でも具体的に、何かに興味が、ということも、ちっちゃい頃からあまりないんです。ちっちゃい時から、こうするという目標を立てるのも得意じゃないけど、漠然と、絶対にこうありたいという気持ちというか、意志みたいなものはあるみたい。

OIT:あなたにとって演技は考えるものですか、それとも、もっと直感的なものですか?
A:わたしはふだんの生活の中で、感覚に頼ってしまうことが多いから、小さい時から、一生懸命考えても出てくることは、ほとんど抽象的で感覚的なことが多くて。ふつうにしてたらそれでもいいのかもしれないけど、ふだんの生活の中でも、もう少し考えるんですよ!でも考えた結果、また感覚的な事だったりするから、直感で動くというか、直感が働かないとどうしたらいいか分からなくて、迷ってしまいますね。そういうのが日常的にあるんですよ。でもお芝居は、自分がすごく感覚に頼ることを分かっているから、それ以上にもっと考える作業をすべきかと思って、考える方に意識を持っていくようにします。でも現場に行ったら、そんなのどっちでも関係ないですね。

OIT:『トルソ』の場合は?
A:この場合、山崎(山崎裕監督)さんから、サクラ、好きなようにやっていいって言われたんです。

OIT:山崎監督から、自由な演出だと伺いました。
A:そうですね。でも山崎さんによく“見られて”ましたね。いや、“見られて”いるというか、それはすごく心地悪いことでもなくて。なんだか、“見られて”いても、誰かがじっと“見て”いるような気がするんです。山崎さんが“撮って”いるというより、彼が“見て”いる感じでした。カメラを持って、覗いて、山崎さんが撮っているのは、山崎さんが何かを見て、それがフィルムに焼きついている感じ。だからいざ見ると、こんなところまで写ってるんだって思うこともたくさんあったし、山崎さんだから写るものがたくさんあって、それはやっぱりすごいって思います。

OIT:自由に(演技を)委ねられた時、役柄や物語はありながら、同時に、自分自身も映りこんでしまいますよね。自由にやっている時こそ、自分が映りこんでしまうこともありますか?
A:それはあるんじゃないですかね。私自身の身体でやっていることだし、例えば、どんな女優さんになりたいかとよく聞かれるけど、そんなことを考えるよりも、どんなふうに生活し、どんな人になり、どう死んでいきたいかを考える方がいいのかなと思ったり。

OIT:人の幅というか、引き出し、とか?
A:うーん、分かんない。そこまでは分かんないですけど、私自身は、意識しているというよりは、あまりこういう女優さんになりたいとかいう意志が、恥ずかしながらぜんぜんなくて。その代わり、こういうふうに“生きたい”というのがすごくあって、今のところそれでいいのかなと思う。例えば、仕事に関しては、その日その日、自分の100%の力で一生懸命やっていたら、どうにか、後で振り返った時に変わっていたりするのかなと思うし、目の前の具体的な目標を立てることが苦手だから、そうなると、空回りしちゃうことが、ちっちゃい時からありましたね。それでも心身ともに、こう生活したい、健康でありたいとか、こういうふうに生きていたいというのはかなり具体的にあります。

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