冒頭の子連れ強盗シーンから一気に引き込まれる。その勢いは留まることを知らず、警察隊との銃撃戦、通りすがりのタクシーをとっ捕まえての逃亡劇、南へ逃げよう、南はメキシコだ、ここはスペインなんだが、という映画狂的ギャグの応酬、逃亡先に待ち受ける魔女の村"スガラムルディ"における驚くべき展開の数々まで、映画は休むことなく疾走し、114分間を一気に駆け抜ける。
魔女たちに追いつめられ怯え切った男達を圧倒する、『ボルベール<帰郷>』(06)の母親役が記憶に新しいカルメン・マウラ(カンヌ女優賞を受賞)の打って変わっての怪演、そして、ゴージャスなモヒカン魔女を存在感抜群で演じるカロリーナ・バングの暴虐演技が見物だ。
『ペルディータ』(97)を、十数年前に見て興奮して以来、随分久しぶりのアレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品との再会となってしまったが、その圧倒的な充実ぶりに大いに驚かされた。ブニュエル、アルモドバルを生んだ国ならではの、ブラック・ユーモアに満ちた非正統派映画の奔流を突き進む、その方向性の揺るぎなさと、映像表現における技術的到達度の高さが両立している様は感動的ですらある。
男女平等が行き渡りつつある現代社会において"魔女"と化した"妻たち"からの逃亡を企てる、心優しき男たちを待ち構えていたのは、文字通り昔ながらの"魔女"の群れだったという、出口なしの"女性恐怖症"と、その表裏一体の関係にありそうな"女性崇拝"の現代的傾向を、ものの見事な疾走感に満ちたブラックコメディ、ファンタスティックな娯楽アクション映画に仕上げたアレックス・デ・ラ・イグレシア、恐るべし!
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