OUTSIDE IN TOKYO
Denis Villeneuve INTERVIEW

ワン・ビン(王兵)『三姉妹~雲南の子』インタヴュー

3. できるだけ子供たちをじっくり観察すること、彼女たちの生活に介入しないこと

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OIT:そうやって彼女を理解していくと、カメラとその対象の距離感においても微妙な関係が見えてくると思うのですが、監督の距離の取り方、その距離感についてはどう考えてますか。
WB:できるだけ子供たちをじっくり観察するように心がけました。実際カメラの距離も、なるべく彼女たちの生活に邪魔にならないよう、遠くに置くようにしていたわけです。なるべく自然な状態で撮れるように彼女たちの生活に介入しないこと。それを心がけました。そうすることによって彼女たちの自然な状態が撮れるわけですね。撮影の日数は実際にとても少なかったので、毎日、相当な長時間をかけて彼女たちに密着して撮っていきました。でも密着する時にできるだけ介入しないこと、それがとても重要に思いました。

OIT:とつぜん彼女たちの生活の中には異質な撮影隊が入ってくるわけですよね。同時に彼女が(数少ない)味方として、自分との関係を求めてくるようなことはありませんでしたか。
WB:彼女たちはちょうどお父さんが出稼ぎに行っていて居なかったので、まずお祖父さんに話を持っていきました。やはり自分たちが、彼女たちの生活を撮るわけですから、どういう目的でどういう風に撮りたいということを、まず初めに、きちんと大人に話しておかなければいけないのです。そこでお祖父さんを訪ねて、まずはっきりとそのことに同意してもらうところから始めたわけです。実はあの村の近くに知っている人が住んでいて、その人からお祖父さんを紹介してもらって、話を持っていき、そして他の村の人たちとの関係も、そのお祖父さんを通じて紹介してもらい、撮っていくというかたちをとりました。

OIT:それでもカメラを持った人たちは透明ではないですよね。監督たちは(ふだん)その村のどこにいらしたのですか。
WB:最初に伯母さんが出てきますが、その伯母さんの家に住まわせてもらっていました。

OIT:カメラは複数台ですか?
WB:この作品では2台使いました。

OIT:監督自身も手持ちで?
WB:はい。

OIT:もう一人のカメラマンとの意思の疎通には、どのような打ち合わせをして臨んだのでしょう。
WB:撮る前にきっちり2人で役割分担を決めるとか、そういうことはしませんでした。それは撮りながら調整していきましたね。特に子供たちなので、行動の範囲がものすごく広いんです。山で放牧していたと思ったら、今度はいきなり走って家に帰っていたり。それについていくのは大変です。一人ではとても彼女たちを追っていけないわけなんです。ですから2人で分担して、山で撮っている人と家に帰ってきた子供をカメラで追っていく人と、また時には1人は休んだり、そういう風に調整していきながら2人で撮っていきました。


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