OUTSIDE IN TOKYO
THOMAS VINTERBERG INTERVIEW

トマス・ヴィンターベア『偽りなき者』オフィシャル・インタヴュー

4.『セレブレーション』を製作して反響があった際に、
 コインの裏側も考えなくてはならないと指摘された

1  |  2  |  3  |  4



Q:プロダクションノートの中で、著名な児童心理学者の話をされています。ある夜にその心理学者が訪れてきて資料文書をあなたに手渡した。十年後、心理学者が必要となったあなたが、その人物に連絡することになった。そして現代の魔女狩りに関するその文書の話を伝えるべきだ、と感じた、ということですが、この映画『偽りなき者』がその文書を読んだ結果、製作することとなった作品だという点をもう少し詳しく教えて頂けますか?
TV:『セレブレーション』を製作して反響があった際に、彼からコインの裏側も考えなくてはならないと指摘されたんだよ。そして「実は、”疑惑的な罪”だけが先歩きして実際には何も起こしていない、という症例がたくさんある」と僕に教えてくれた。そこからアイディアが浮かんだんだ。そういう要素を反映させて、もっと考えを進めていった作品を作り上げるのも面白いのではないか、と思ったんだ。それと、彼が話してくれた「虚偽の記憶」という話も非常に興味深いものだった。これはとても恐ろしいことなんだけど、もし子供に何度か同じ質問をするとその子供は、実際にそれが起こったことだと信じてしまうことがあるらしい。例えば、質問者が子供に何度か同じ事を質問する、お母さんが突然泣き出した、お父さんがケンカをする、誰かが刑務所に入った、自分は心理学の医者へ頻繁に行かされた、または誰かが犯罪を犯した、とかね。つまり、子供が犠牲者である、という完璧な妄想だ。そういった子供は、自分が犠牲者だと信じて成長していく。そして同じような問題を抱えて大きくなっていき、身体的に虐待されたと考えるようになる。子供がシステムの犠牲者となってしまうんだ。同時に、過度に子供を守ったり助けたりすることも問題だと思ったんだ。それを、作品として描き出せば、良いドラマになると思ったのさ。

Q:最後に質問させてください。この映画を通して伝えたかったメッセージというのは何だったのですか?
TV:うーん…僕は伝道者ではないから特に伝えたいメッセージというものはないよ(笑)。ただ、ノスタルジックな方法で問題提起してみたかっただけだ。今回のようなテーマにチャレンジしてみて言えることは、この映画を観た後、人々はお互いに愛し合えるよう、信頼しあえるよう、努力していこうと思ってくれるんじゃないかな、ということ。正直な話、僕はこういうふうに言葉でメッセージを伝えるのは得意じゃないんだ(笑)。


1  |  2  |  3  |  4