OUTSIDE IN TOKYO
SHIBATA GO INTERVIEW

柴田剛『堀川中立売』インタヴュー

7. ポスト・プロダクション、カオスのイロハは相互理解にある

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OIT:編集にはかなり時間がかかったんですか?
SG:かかりましたね、やっぱり。ないところからのビジョンを共有していくっていう、ないビジョンをどう共有するんだっていう、ルールを決めるとルールに足下すくわれていくっていうところもあるので。だからモチベーションをスタッフ内で維持することがものすごく大事でした。

OIT:編集の方は一人ですか?
SG:基本一人、高倉といって、彼は『おそいひと』では撮影をしている、10年ぶりに合流して映画を作ったんですけど、その間に彼は色々なCMですとかPVの業界でディレクターをやったり、もう何でも出来るんで、いわば技を磨いていた。今回はその技が通用しない内容でした。一言でどうなんだって彼に言われた時に、カオスと答えました。一言いったのは、僕は撮影をしっかりしたんでそれのOKカットとNGカットがあるにせよ、それぞれに全部やりきったから、むしろこれ以上なことは出来ないわけなんで、それを本当にそこから抽出してくれと、注意深く現場でやりきっているところを、本当に拾い上げ、すくい上げてくれって言ったんです。

OIT:かなりハードなふりですよね。
SG:だからなるべくテイク3までっていうのはあったんですけど。

OIT:音をつけたのはその後ですか?
SG:そうです。どうしても音楽好きなんで、このバンドだったらこの曲使いたいからこの映像でいきたいっていうイメージがあるんですけど、そうするとこの映画のプロジェクトとは違うだろうと。プロモーションビデオみたいにちんまり収まるものじゃないんだっていう、もうカオスっていうよりも、音楽なんですよね。色々なバンドの色々な曲で一つの大きな音楽の塊っていう。映画という呈をなしてるけど音楽として聞いてもらうという。その時に目を瞑ることも可能だけど目を開けてずっと引っ張っていかなきゃいけない。ただそれで編集マンもぎりぎりで我慢できなくなるわけですよ、もういい加減音源よこせって。それはもうご褒美みたいな感じで。一週間後とかに行って、なんか俺もこの曲好きだなみたいなのを彼も入れてたりして、僕の方が逆にテンションあがるっていう、以心伝心の部分で。僕も撮影してきたものを拾ってくれると嬉しい。みんなにモチベーション上げたり与えてばっかりだと僕も疲れてくるんで、もぬけのからになるんで。僕も褒めてほしいみたいな。多分カオスのイロハっていうのは相互理解にあるんだと思って、優しさなんですよね。

OIT:音楽以外の音響的な部分っていうのは色々設計しているんですか?
SG:音響の人と録音の人と声音の人、もう入り乱れてました。

OIT:それをトータルに最終的にまとめるのは編集の方?監督が?
SG:やっぱり最後はポスプロの全員になってくるんですよ。

OIT:あーだこーだ言いながら。
SG:そうなんですよね。音の仕事をしている人達同士で、お互い言えないことがあると思うんです。するとやっぱり僕は監督なんで何にも発言しなくても居なきゃいけないですけど、その居るっていうのが仕事みたいな、監督の芝居をするっていうのも仕事みたいな。あと編集の人間ですね、ここにこういう音があったらいいなぁっていう、柔らかく言える。そうするとこっちのフィールドレコーディングの人が全体のコーディネイトがおかしくなってくるなんて言う、そうすると他が入っていって補填するしかないんですよね。

OIT:ところで、いまでもライブには行くんですか?
SG:ライブは決めないで行くんですよ。1,500円のライブとかも、そんなの多いから、関西も逆にライブハウス余ってるからって、フリーに色々なミュージシャンがセッションしてたりする。パンク畑の人間とかレゲエもいるし、普通に静かなバンドやってるとか。そういうのに行きますね。

OIT:これからも多分そういうのは、つかず離れず自然に監督の映画の中に、人間を通して入ってくるんでしょうね。
SG:そうですね。あんまり映画の中でどう欲張ろうとかはないですね。もう一度、映画の基礎は振り返らなきゃいけないっていう、あまりにも拡張しすぎたから。色々言われるんですよ、批評家の人とかにも、普通どんどん年をとればとるほど外側に向ける暴力姿勢っていうものは、例えば石井聰亙さんですとか色々な監督さんも、だんだん内向きの内面の世界になって静かになっていくのに、柴田くんの場合は違うよねって。ずっと放電してるからそれは自覚してるの?って言われた時になんかハッて気付かされた。

OIT:『堀川中立売』の観客の反応が、楽しみですね。
SG:すごい楽しみです。分りやすい反応の方が一番いいんですけどね。ものすごい怒ってきたりとか、金返せとか、すごい影響を受けたっていって本当に影響を受けてしまうとか。

OIT:この子(祷キララ)みたいに?
SG:でもこの子あれですからね、最後この映画観て「なんで私がデカくなんねん」って。
スタッフに言われましたよ、「お前すごいで。一ケタの年の子につっこまれてんねんからな。これはすごいことやで。」って(笑)。

OIT:小学生?
SG:小4とかじゃないかな?

OIT:なんかしっかりした顔をしてますね。
SG:しっかりしてるんですよ、やっぱり目力が。昔からそれはそうだなって思ったんですけど。どんな大人になるんでしょう。

OIT:次の監督の映画にも出てほしいですね。
SG:嫌われてなかったら。これ以上そういう役者達が増えたら、僕は余計空気になってしまう。

OIT:一作ごとにそういう人達が増えていく。
SG:僕も一つ一つ映画で成長していきたいですね。

OIT:今後もご活躍を楽しみにしています。
SG:ありがとうございます。

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