OUTSIDE IN TOKYO
Rebecca Zlotowski INTERVIEW

レベッカ・ズロトヴスキ『美しき棘』インタヴュー

2. この映画の中で”裸”はとても大切な意味を持っています

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OIT:女性の裸が、映画が始まってすぐに登場して、それがエロティックにというよりは剥き出しに撮られている。そこは女性監督なのでやりやすかったということはあるのでしょうか?
RZ:まずフランス人であるということで、裸のシーンが撮りやすいというのはあると思いますね。映画におけるセクシャリティを割と扱いやすい環境があります。国によってはやはりその俳優さん達に脱いでくれと言うのは難しいという所もあると思いますが、そういう問題はフランスではないですね、宗教的にも社会的にもないというのが一つあります。それから映画と脚本にちゃんとしっかりした統一性があって力があれば本当に役者さんというのは何でもやってくれるんですよね。一つ一つのシーンにちゃんと意味があって、むやみやたらと脱げって言ってるんじゃないっていうことを理解してもらえれば問題にはならないっていうことですね。それからこの映画の中では裸というのはとても大切な意味を持っているわけです。登場人物の一番内面的な部分に入っていく、そこで裸っていうことと結びついているのでとても大切でした。確かに女性であるためにそれがやりやすかったっていうことはあるかもしれません、もちろん男性だったとしても役者さん達には必要があれば脱いでくれと言えたと思いますけれども。女性であるということで変な疑いを持たれないし、別に覗き見主義ではないと、私もあなたと同じ体なんだから、あなたの裸を見るのが嬉しくて言ってるわけじゃないっていうのは分ってもらいやすかったと思います。でも本当は女優さん達の裸を見るのは嬉しかったんです(笑)。楽しかったですよ。

OIT:物語の初めの着想は、道で拾った女の子のダイアリーだったそうですね。最初にそれがあって脚本がスタートしたんでしょうか?
RZ:日記帳だったんですね、一年分の日記帳で、その中にいろいろ写真が挟んであったり場所のことが書かれていたり、内容的にはごく単純なものだったので覚えていないぐらいなんですけれども、そこに書かれていた場所というのがランジスのバイク・サーキットだったので、それが凄く記憶に残ったというのがあります。

OIT:主人公についてちょっと聞きたいのですが、プリューデンスというネーミングが、フランス人の名前として一般的なのかどうかちょっとよく分らないんですけど、慎重さとか聡明さとか辞書で調べるとそういう言葉が出てきました。このネーミングについてお尋ねしたいのと、ネーミングをした父親の想いがそれに懸けられてると物語上考えていいのでしょうか?
RZ:今ちょっと面白いなって思ったんですけど、これは登場人物プリューデンスの親がつけた名前だっていうことを、私考えていなかったんですね、私自身が選んだ、監督として選んだ名前としか思っていなかったので、とても面白いご指摘だと思うんですけれども、この主人公はどんどん危険な方に向かっていく、全くプリューデントではない人物だっていうことを暗に語ってるんですね。だから決してプリューデントな子ではありませんよっていうことをまず知らせるために選んだ名前です。

OIT:「プリューデンス」っていうレコードが出てきて彼女が破ってしまうんですよね。あのレコードもあの曲もこの映画のために作ったんですか?
RZ:そうです(笑)。わざと古く見えるように美術さんが一生懸命やってくれたんです。

OIT:70年代のロックのレコードのようなジャケットだったと思うんですけど。
RZ:その通りです。新しく出来た女友達とのちょっと皮肉なやり取りの所に出てくるんですよね。この歌はプリューデンス自身は素敵な歌だと思って育ったわけですよね、両親も好きだった、そして自分がその名前をつけられたわけですから。でも友達にこんな古くさいのはないって言われて、実際に古くさいんだっていうことをそこで気がついて、その友達に気に入られようとしてあれを破ってしまうわけですね。

OIT:その曲も面白かったんですけど、全体的にサウンドトラックが凄くいいなと思ったんですが、監督の音楽に対する好みが反映されているのでしょうか?
RZ:はい。もう全てのことが私の趣味やテイストを反映してますね。

OIT:プリューデンスはちなみにビートルズの「ディア・プリューデンス」とは関係ない?
RZ:「ディア・プルーデンス」は大好きですけれども、直接は関係ないですね。ただこの映画の英語のタイトルは『Dear Prudence』になったんですよ。

OIT:そうでしたか。プリューデンスを演じたレア・セドゥが素晴らしいんですけれど、彼女との仕事はどうでしたか?
RZ:非常に濃密でした、彼女は主役が初めてなので凄く意欲もあったんだけど、同時に怖さも感じていました。凄く難しい役だったと思うんですね、つまり内面では凄く色んなことが起こっているんだけれども、表面的には凄く無表情、無口でっていう役でしたので、内面の物語を語れる女優っていうことが凄く重要でした。

OIT:どの程度、演出は固めていたんでしょう?まず脚本があったと思うのですが、その言葉通りに彼女は芝居をしているのか、インプロビゼーションみたいなものはあったのでしょうか?
RZ:これはシネマスコープで35mmで撮っているんですね、だからその役者の立ち位置とか凄く正確に決めておかないと難しいので、撮影の時のインプロビゼーションっていうのはなかったです。ただリハーサルの間に色々即興でやってもらったことはあります。


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