OUTSIDE IN TOKYO
melvil poupaud INTERVIEW

メルヴィル・プポー『ミステリーズ 運命のリスボン』インタヴュー

2. 役者というのは、狂気の人の職業っていう感じがします

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Q:ラウルからのオファーを受けてNOと言ったことはあるんですか?
MP:いい質問ですね。彼との経験というのはユニークな経験ですから、唯一無二ですから、僕の方から電話したりすることもあるんですよ、パリでランチしようとか、彼が入院した時も何度も訪れてますし、僕にとっての師匠みたいな存在です。この本の中にも書かれていますけど、『スターウォーズ』のヨーダみたいな感じですね。その教えを何とか自分のものにしようとしました、ヨーダよりラウル監督の方がユーモアがありますけどね。

Q:ラウル・ルイスのセオリーについてメルヴィルさんの理解するところを聞かせてほしいんですが、一人の人物には三つの側面があるという、例えば、それはなぜ三なのか?
MP:カバラって分かりますか?秘教のカバラのことです。ラウルは、科学とか数学の論理を凄く勉強してる人なんですよね、中国とか日本の文化のことも凄く造詣が深いんです。彼は、色々な知っている文物から全部寄せ集めで自分自身のセオリーを作り出したみたいなところがありますよね。三の数字の意味は分かりませんけど。役者としては、どこに光があって、どこにカメラがあって、どういうレンズを使ってるとか、そういう技術的な知識っていうのを持って撮影に望んでいるっていう部分が一つあるのと、その演じているキャラクターになりきろうとしている役者がいます、現場における役者にとっての第二のパーソナリティですよね、それで既に二つです。それとは別に自分自身がいる。よく寝たとか、ちゃんとお腹は満たされてるとか、そういう自分自身のパーソナリティっていうのがあります。この三つが集結してるのが現場の役者の状態じゃないでしょうか。そのマルチな存在が常に進化している、そういう風な存在、アイデンティティとはユニークなもので、一つではなくて、三つとは言わないまでも、おそらく複数携えているんでしょうね。

Q:それは自然なことだと感じますか?
MP:役者っていうのは、そもそも存在自体が自然なものではないですね、状況としては。やっぱり自分の感情をコントロールしたり、不自然なところがありますよね。凄い感動的な場面を演じなければならない時は、感情を自分の中から沸き出して自分のものにしてしまわないといけない、それはちょっと錬金術みたいな作業ですよね、コントロールしなければならない。カメラの準備が出来てないとか、様々なアクシデントもあるわけですから、常に自制しないといけない。共演者の人が台詞を覚えてないとか、せっかく泣こうとしてたのに泣いちゃいけないシーンだった、みたいな(笑)。狂気の人の職業っていう感じがしますね。だからプライベートでも誰かに見られてるっていう意識もあります、やっぱり役者であることの職業的な意識が普通に生活しているときもあります。だからどういう時にこの発言をしたら、どういう風なインパクトがあるだろうとか、そういうことも意識しながら生きてるところはありますね。


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