OUTSIDE IN TOKYO
Press conference

マーティン・スコセッシ『沈黙 –サイレンス–』来日記者会見全文掲載

5. とにかく忠実に、そして敬意を持って、
 そして共感と品位を持って描こうと力の限りを尽くした

1  |  2  |  3  |  4  |  5



司会:ありがとうございます。ではここでもう一方、お招きしている方がおりますので、マーティン・スコセッシ監督に会って頂きたいと思います。今現在も、その伝統を守り続けている隠れキリシタンの方を長崎よりお招きいたしました。ご紹介させて頂きます。隠れキリシタン帳方の村上茂則さんです。
村上茂則氏:只今ご紹介頂きました長崎の外海から来ました村上茂則といいます。本日は『沈黙 –サイレンス–』の監督さんにお会い出来て非常に喜んでおります。またこういった場所を設けて頂きまして、本当に感謝いたしております。今、長崎県には三箇所隠れキリシタンの村があるのですけれども、もう三箇所しか残っていません。当時は40万人いたという信者達が、今は300人しか残っていません。そういった中で、外海の隠れキリシタンは、二箇所あるんですけれども、あと一つは五島列島の若松にあって、日本にはこの三箇所しか残っていない。そういった中で『沈黙 –サイレンス–』で“隠れキリシタン”がもの凄い話題になっていて、私も、初めてこうして人前でお話しをすることになりました。私たちは、今は潜んでおりませんけれど、信仰は、未だに昔のままの形態で続けております。今後も続けたいと思いますので、よろしくお願いします。
司会:ありがとうございます。村上さん、実際に『沈黙 –サイレンス–』をご覧頂いたんですよね?ご覧になった率直な感想を聞かせて頂けますでしょうか?
村上茂則氏:私は先月の20日、長崎でこの映画を観させて頂きました。映画の中で、自分の先祖達がこういうひどい目にあって、これだけ弾圧を受けながらやってきたと(いうものを見ることが出来た)、ぜひ皆さんにも観て頂きたいし、世界の人達と日本の人達に是非この映画を観て頂きたい、そういう風に思っています。やっぱり映画を観て感じたのは、自分の先祖だと思うと、涙も出てきます、感情を露にする映画じゃないかと、そういう風に思っておりまして、ぜひ皆さんに観て頂きたいと思います。
司会:ありがとうございます。監督、いかがですか?
マーティン・スコセッシ:私としてただもう、この映画が、日本の文化、そして日本にいたクリスチャンの皆さんの勇気を損なうことのないように描いたつもりです、そうなっていればいいと願います。とにかく忠実に、そして敬意を持って、そして共感と品位を持って描こうと力の限りを尽くしました。映画の撮影中は、例えばモキチ(塚本晋也)が水磔に処せられて十字架に張り付けになるシーンがありますけれど、あのシーンを撮影していてもアメリカのキャストも、日本のキャストも、撮影スタッフも、みんな涙しました。本当に真剣に取り組んだ撮影であったし、何と言えばいいのか、、、やらなければならない通過儀礼、これは巡礼なんだと、そういう感覚を覚えました。


←前ページ    1  |  2  |  3  |  4  |  5