OUTSIDE IN TOKYO
LEE JOO HYUN INTERVIEW

イ・ジュヒョン『レッド・ファミリー』インタヴュー

3. 果たしてどこまでが人生で、どこまでが演技なのか、その境界線を探っていくことに興味があります

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OIT:それはとても楽しみです。『レッド・ファミリー』に関して、疑似家族の彼らは”演じる”ということを劇中で二重にやっているわけですけれども、それはとても映画的なテーマだなと思ったんですね。この”演じる”ということについて監督の考えをお聞かせください。
イ・ジュヒョン:今、仰って頂いたことは、私自身もの凄く関心を持っているところです。普段から、私は役者とは何か、演技とは何かということをよく考えているんですけれども、今回の映画はその最たるものでしたよね。まず俳優さん達が現場に来ます、カメラの前に立ちます、そして演技をしますけれども、まず最初に一回目の演技をします、そして今度、彼ら、彼女らは部屋に入ります、そうすると今度は北朝鮮の人物になって演技をするわけですね、そして、また外にたら如何にも仲のいい、和気藹々とした仲睦まじい家族を演じるという、何層にも色々な演技をしているというのが今作の魅力だったと思います。だから観ている人も、家の中にいるのが本当なのか、外にいるのがリアルなのかって、皆さん考えると思うんですけれども、演じている側も本当に楽しかったみたいなんですね。よく”額縁構造”って言うんですけれども、演技の中の演技、またその中の演技という感じで幾重にも折り重なっていて、俳優さん達もそういうことをやってみたかったようです。今回、私が好きな俳優さんがたくさん集まってきてくださったのも、皆さんそういう演技に興味を持って、一本の映画の中で一つの面だけを見せるキャラクターじゃなくて、変化がある演技が出来るということで凄く気に入って演じてくれました。まるで一人の人物があちこち行ったり来たりしてるような感じで。そして最後は最後でまたエネルギーを爆発させて隣の家の演技をするわけですね。そんな風にして本当に沢山の演技を私も間近で見ることが出来て、更に、演技とは何だろうということを考えさせられました。

実は好きな映画があるんです、これは短編のアニメーションなんですけれども、それはある演劇の舞台が終わった女優さんが演劇の会場から出てきます、女優さんって綺麗だからみんな写真撮るんですね、ところが彼女は家に帰って化粧を落とすと凄く老けた老人なんですね。寝て、次の日にまた舞台に上がるんですが、その時は老人の演技をするんですよ、老人のまま老人の演技をするんですけれども、初日と違って誰も写真を撮らないんですね、ところが老人の演技をした日に家に帰って化粧を落とすと今度は若い姿になっているっていう映画なんです。私達は普段、女優とか俳優じゃなくても演技してますよね、例えば、誰かに昨日お酒飲みに行ったことを話す時、昨日こんなことがあってねって話す時にもやっぱり演じてると思うんですね。誰かの物真似をしたりするのも一つの演技ですね。また、昔の話をして自分は昔こうだったんだよっていう時、ある意味それも演技だと思うので、私自身、普段から演技のリアルさっていうのは何だろうっていうことをよく考えますけれども、今回の『レッド・ファミリー』では、そういった部分、演技の色んな面を引き出せて、どこまでがリアルかっていうのを考えることが出来た作品だったと思います。

レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』でも一日の様子が描かれているんですけれども、あそこでも問いかけがありますよね。この人物の姿というのは人生なのか演技なのかっていう問いかけがあるんですけれども、よく俳優っていうのは嘘の上手い技術者、嘘を上手く見せるのが俳優だっていう風に言われるんですけれども、キム・ギドク監督も俳優っていうのは演技をしてること自体が人生なんだってよくおっしゃっていたんですね、確かにそうですよね。俳優さん達で現場に来て仮に一時間、二時間、現場に居たとしても、もうそれそのものが人生になっているわけですから、まさに演技をすることが人生だという風に言えるんじゃないかなと思います。私も、果たしてどこまでが人生で、どこまでが演技なのか、その境界線を探っていくことにとても興味があるので、後々、演技に関するシナリオも書いてみたいとすら思っています。

OIT:監督がご覧になった短編映画のお話を伺って、私も丁度、『ホーリー・モーターズ』のことを想起しました。今お話頂いた、演技に対する監督が考えていることは新しい作品にも当然テーマとして入ってきますよね?
イ・ジュヒョン:はい、まさにそうなんです。俳優を、女優を職業としている女性がもうこれ以上演技が出来ないという状況になってしまって家に帰ってくるんですね、彼女は演技と人生の狭間で色々と悩む、そんな人物が出てきます。

OIT:凄く楽しみですね。あと、監督の口からカラックスの名前が出てきたのはとても嬉しかったです。
イ・ジュヒョン:私も尊敬している監督です。キム・ギドク監督もレオス・カラックスにかなりの影響を受けていますしね。


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