OUTSIDE IN TOKYO
KITANO TAKESHI INTERVIEW

北野武『アウトレイジ ビヨンド』インタヴュー

2. したたかな人には好きにやってもらって、編集で間を詰めた

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Q:今回の作品も前作もそうなんですけど、言葉の量が多いのが大きな特徴ですし、ひたすら罵り合いが多いと思うんですけど、今まで監督の作品は言葉の数をどれだけ減らしていけるかっていうところでずっと表現されてきたと思います。逆に今回は、言葉の数を増やす、どこまで増やすのか、どこまで抑えるのかっていうところで実際に脚本を書いて、撮影していく中でアドリブで増えていくところもあると思うんですけれど、言葉の数をどこまで増やすのか、基準みたいなものはありましたか?
北野武:基本的に役者さんはアドリブ無しで、ほとんど脚本のまんま演じてもらったよ。元々初期の監督作品っていうのは、普段漫才で喋ってるから、映画ではあまり喋んのは嫌だってのが多かった。「見りゃ分かるだろ」っていうのがあって。ところが、この間テレビでお笑い番組をみたら、タレントが喋ってる言葉にぜんぶ吹き出しテロップが出てるでしょ。耳の不自由な人に対するサービスとしてならわかるんだけど、「ワッハッハ」って笑っている映像の下に「ワッハッハ」て吹き出しテロップを出してて、これ何だよ、ここまで教えるのかって。ただ、テレビがそこまでやってるのに、自分の映画で「台詞がなくてもわかって」ってやってもこりゃ無理かなって思った。もちろんエンターテイメントとしてはね。違うジャンルの映画はそれでもいいと思うけど、今回みたいなエンターテイメント作品は、はっきり喋って教えてやんなきゃいけないって意識したよ。感情を表現する時に、相手をただ睨みつけるんじゃなくて、「何だその顔はコノヤロー」まで言わせたっていうのはあるよね。

Q:たくさん喋りまくることによって、喋ってること以上になにか怖いよりも怖さを超えた一種面白味というか、これ笑っていいんだろうかっていうなんか凄く不思議な感じにすらなってくる。
北野武:怒鳴りあいを過度に観させられると、だんだん笑うしかないってなるかもね。

Q:最初から脚本書きながらやっぱりそうなるなという感じですか?
北野武:今回は役者さんが「出たい」って言ってくれた人が多いんだけど、台詞喋らせると、みんなしたたかな人ばっかりなんだよ(笑)。上手いからいいんだけど。じゃあってことで、したたかな人には好きにやってもらったよ、編集で変わったシーンもあるけど(笑)。

Q:入ってない(笑)。
北野武:編集では間を結構詰めたね。役者さんてみんな自分の間も持ってるんだよね。人によっては(顔をつくりながら)こーうやって間をもって(芝居を)やるんだけど、こっちの狙いと違う時もあって。罵り合いのシーンでは、漫才のようにじゃんじゃん怒鳴り合いをしたかったんだけどやっぱりお互いに間をもったんでそれを編集で詰める作業が大変だったね、面白かったけど。

Q:クランクインの直前に大震災が起こって撮影が一旦中止になって、ちょうど一年後に撮影が開始されたと伺ってるんですけど、その一年の間に作品自体のシナリオとかアイデアとか、監督自身の映画にかけるテンションとか、何か変わったものはあったんでしょうか?
北野武:やっぱり、一年で随分台詞が増えたよね。あとは高橋克典君が「出してほしい」って言ってくれて。ただもう台詞のある登場人物がないよって言ったんだけど、「なくてもいいです」って言ってくれて。それで殺し屋の役にしたんだけど、いかに目立たせるかとかを考える時間があったよね。話の筋としては変わってないけどちょっとしたニュアンスとかシーンを外したり増やしたりして、一年でよくなったっていうのはある。当初の台本だともうちょっと荒っぽかっくなってたかもしんないね。

Q:当初は前作からあまり時間がなかったわけですが、逆に二年という間があいたわけですね。
北野武:うん、逆に台本チェック何回も出来たんで、もっと面白くできるなっていうのに気付いたり。とくにラストシーンなんかは、この手があるってなかなか気がつかなかったからね。撮影の半年くらい前に思いついて、良かった良かったと思って。そのまま撮影してたら違うエンディングになってて、今の「えっこうなるんだ」っていうのが無かったかもしれないね。

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