OUTSIDE IN TOKYO
KEN LOACH INTERVIEW

ケン・ローチ『わたしは、ダニエル・ブレイク』オフィシャル・インタヴュー

3. 私は誰のために働いてきたか、それはずっと変わっていないと思いたい

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Q:『キャシー・カム・ホーム』から50年が経ちました。デビューからこれは変えられない、譲れないということがあれば、教えてください。
ケン・ローチ:レインコートでしょうか(笑)。もうかなり古びているのですけれど。なぜ買い替えないのか?なぜでしょうね。特に駆け出しの頃はたくさんのことを学びました。若い頃はたくさん学習し、様々な影響を受けながら、自分の仕事のやり方を見つけていくものでしょう。私は誰のために働いてきたか、それはずっと変わっていないと思いたいです。「どちら側に付くのか?」という古くからの難しい問いに、「私は常に同じ側にいる」と答えるようでありたいです。

Q:好きな映画監督、作品を教えていただけますか。
ケン・ローチ:50年代のイタリア映画と60年代のチェコ映画が好きです。当時から私は映画監督でしたが、若い頃に見た映画が一番記憶に残っています。『自転車泥棒』(48)は非常に影響力のある作品です。イタリア人監督ジッロ・ポンテコルヴォの『アルジェの戦い』(66)も美しい。そして本当に面白い映画としていつも挙げるのは、イジー・メンツェル、ミロス・フォアマンら、その他同時代の監督のチェコの映画です。

Q:好きな日本人監督、映画はありますか?
ケン・ローチ:黒澤明監督は偉大です。日本映画はスタイルが全く違っており、ヨーロッパの社会派から見ると異文化を発見する思いです。とても印象深く、心を動かされる作品ばかりです。私たちにとっては想像を絶するのですが、それが良いのです。映画製作のアイデアの幅を広げてくれますから。

Q:まだ、まだ、日本のファンはあなたの映画を待っています。次に気になっている社会問題または、映画化したいテーマはありますか?
ケン・ローチ:今はまだありません。しばらく休みを、春になったら考えるかもしれませんが、まだ分かりません。

Q:日本のファンへのメッセージをお願いします。
ケン・ローチ:この映画をご覧になる日本の皆さん、こんにちは。登場人物との出会いを楽しんでください。本作で起こる出来事と、日本でも起こっていることの間にある共通点に気づいていただければと思います。

先進工業諸国ならどこでも、似た問題に苦しんでいるのではないでしょうか。政治的には、資本主義経済を支持する政府を持つ国々は、労働者階級を今いる場所に留まらせる手段を編み出します。貧しく、助けが必要な人々を痛めつけるシステムがその一例です。

英国の政府はその残忍性を分かっていてやっています。その施策がどのような結果を招くか、政府は完全に認識していますし、日本にも同じ状況が見られるかもしれません。もしそうであれば、私たちは変化を求めるべきです。でも今しばらくは、ケイティ、ダニエルやその他の登場人物たちと知り合いになってください。


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