OUTSIDE IN TOKYO
ICIAR BOLLAIN INTERVIEW

イシアル・ポジャイン『オリーブの樹は呼んでいる』インタヴュー

2. スペイン人は、嘘、というかジョークに対する寛容度が高いのです

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OIT:今回の撮影は順撮りだったのでしょうか?
イシアル・ポジャイン:出来るだけ順撮りで撮りたかったのですが、制作チームにとっては負担が大きいんですね。ですから、ほぼ時系列では撮れているのですが、エンディングをスペインで撮ってから、ドイツへ行きました。

OIT:ということは、あのトラックでの移動のシーンは、スペインで撮った後に撮ったということですね。
イシアル・ポジャイン:そういうことです。撮影の一番最後はドイツでした。ドイツの中では順撮りで撮影できましたね。

OIT:この映画では“静”と“動”のコントラストが上手く演出されていますね。アルマと祖父、アルマとラフィ、そして、オリーブ農園と養鶏場、それぞれが静と動のコントラストを成している。この辺りの演出はどの段階で考えられたのでしょうか?
イシアル・ポジャイン:そうしたことも事前に脚本に書き込まれていました。実際に、養鶏場の周囲には、あの樹齢2000年のオリーブの樹があったのです。2000年生きてきた樹の横には、40日で命を終えてしまう鶏たちのいる養鶏場がある、ライフスパンが全く違う。ポールが、シナリオハンティングのために、現地に赴いた時、何千年も変わっていない風景のすぐ横に、そうした慌ただしい養鶏場があった、その対比を見て、彼はそれを脚本の中に取り入れたわけです。あなたが指摘してくれた、そうした静と動の対比に彼は凄く魅せられていました。

OIT:実は、映画が始まって暫くは、アルマの行動があまりに無謀なもので、少し不安を感じながら見ていました。それが、3人の旅が始まると、どんどん映画に引き込まれて行きました。それは、恐らく、ラフィと叔父の過去が徐々に明らかにされていくに従って、人間的なリアリティがスクリーンから伝わってきたからなのだと思います。この3人の関係をどのように作り上げていったのでしょうか?
イシアル・ポジャイン:イシアル・ポジャイン:あの3人は、とても上手く複雑な関係を演じ切ってくれました。凄く問題のあるシーンもありましたけれども、この3人が上手く演じてくれたおかげで、平和的に物事を運ぶことができました。移動中、フランスの食堂で大喧嘩をするシーンがありましたけれども、あのシーンが上手くいったことがこの映画にとっては大きかったと思います。役者たちにとってもそうだったはずです。

OIT:なるほど。食堂のシーンというと、そのフランスの前に、スペインのカフェで、皆が集まっている中で、アルマが叔父とラフィをペテンにかけるシーンがありますけれども、ちょっと尋常ではない騙し方ですよね?スペインではああいう騙し方は左程珍しくはないのでしょうか?
イシアル・ポジャイン:いえいえ、そんなことはありません(笑)。アルマは、やはり相当変わった女の子ですが、頭の回転はとても速い。実は、ポール・ラヴァーティという人が、ああしたジョークで人を騙すのが上手くて、そういうことをするのが好きな人なんです(笑)。そういうアルマの本質を表すようなエキスを入れたかったんですね。ですから、普通はあのような人は滅多にいないわけですが、それでも、台詞にはとてもスペイン的なニュアンスが入っていると思います。実はあのシーンでは、ラファもトラックは手に入らない、って嘘をついています。だから、皆嘘をついている(笑)。スペイン人というのは、嘘、というかジョークに対する寛容度が高いところがありますから、スペインの観客はあのシーンに対してあまり違和感を抱かないかもしれません。



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