OUTSIDE IN TOKYO
Guillaume Brac INTERVIEW

ギヨーム・ブラック『やさしい人』インタヴュー

2. ロカルノ映画祭でかける前に自分一人で編集をやり直した、
 それが最終バージョンになっています

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OIT:それを受けて、二つ聞きたいことがあります。その影響を受けた監督、そしてまたそのノワールの作品で特に意識した作品は何だったのでしょう?
ギヨーム・ブラック:まず作品の方についてですが、このフィルム・ノワールの下敷きというか、念頭にあった映画でまず思い出すのが、これは正確にはフィルム・ノワールではないけれども、フィルム・ノワールに本当に近づいているものとしてジェームズ・グレイの『トゥー・ラバーズ』(08)があります、とても大好きな作品です。そしてフランスでも有名ではないので、もしかしたらご存知ないかもしれませんけれども、パトリック・ドベールとミュウ=ミュウが出演している『F COMME FAIRBANKS』(68)というフランス映画があります。これも同じようにとても精神的に弱い男、そして経済的にも自分で仕事をしてお金を稼ぐことが出来ない男が、恋愛で結局自分に満足出来なくてこの恋愛話もぶち壊してしまって、最後は狂気に陥るという映画です。モーリス・ドゥゴーソンという監督の作品です。そして撮影監督のトム・アラーリも同じ考えを持っていたのですが、フィルム・ノワールで思い出す映画として、ミネリの『明日になれば他人』(62)があります。カーク・ダグラスが主演しています。これは完全なフィルム・ノワール映画です。この三つの映画を思い浮かべました。あと、今、突然思い出しましたけれども、トリュフォーの『柔らかい肌』(64)ですね。

OIT:後半と言っていた部分ではスピードも転換しますし、そこからの撮影は、どういう風に構成したいというのは念頭にありましたか?
ギヨーム・ブラック:まあスピードから何から、全てが初めから計画されていたわけではないんです。脚本の段階では、メロディ(ソレーヌ・リゴ)がマクシム(ヴァンサン・マケーニュ)の前から姿を消すのはもっと後で起こるはずでした。しかし編集でそれらのシーンをカットしましたんです。最終的に映画は二つの部分に分かれるようになっていますが、脚本の段階ではメロディが彼の元を去るのはもっと後でした。ですから沢山色々な要素を編集の段階で削っていきました。例えば、なぜマクシムがメロディにこれほど執着するのか、その説明的な部分を脚本の段階では沢山入れていたんです。しかしそれは編集の段階でほとんどカットしてしまいました。人生というのはそんなに説明的に言わなくても分かるものだと思ったのです。観客の方もそれぞれが、それぞれの経験をしているわけですから、これは説明がなくても理解出来るという風に感じたわけです。ですから、その説明的な部分を随分カットしているので、冒頭はとてもスピードが早くなっているのですね。後半はリズムを見つけるのが難しかった。この緊張感をいかに上手く表現するかということで色々考えました。そして、ロカルノ映画祭でかける前に一人でまた編集をし直しました。この緊張感というものを表現するために、自分一人で編集をまたやり直したのです。それが最終バージョンになっています。


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