OUTSIDE IN TOKYO
DEREC CIAFRANCE INTERVIEW

デレク・シアンフランス『光をくれた人』オフィシャル・インタヴュー

3. 映画のベッドシーンは通常あまり好きじゃないんだけど、
 この作品のふたりの間には純粋で穏やかな絆が感じられた。

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Q:ふたりの相性はいかがでしたか?
デレク・シアンフランス:個々に会っている時からふたりは相性がいいと思っていた。一緒にいる姿が想像できたんだ。濃密なシーンを撮影する時はいつも戸惑うけど、何を目指しているのかは明確に伝えるようにしている。イザベルはこれまで男性と付き合ったことがないし、トムも戦場にいたから、過去4年間は誰とも親密な関係を持ったことがないはずだ。彼は恐怖に駆られていて、内面は死んでいるんだ。そんな彼が生き返る。だからベッドシーンではできるだけ素直に演じてもらうようにした。そしてふたりは美しく、優しく、親密な演技を見せてくれた。映画のベッドシーンは通常あまり好きじゃないんだけど、この作品のふたりの間には純粋で穏やかな絆が感じられた。脆く壊れそうな2つの魂が、互いを慰め合っている。それが美しく思えた。

Q:ふたりが提案したシーンがあったそうですね。
デレク・シアンフランス:ヒゲを剃るシーンは彼らの提案だったんだ。トムはもともとヒゲがなかったんだけど、ある日マイケルが“トムにヒゲを生やして、彼女に剃らせたらどうだ”と言ってきたんだ。最高のアイデアだと思ったよ。男女の関係ってそういうものだからね。相手のために自分を変えるのさ。トムが“壁”を取り除く瞬間を見せることもできた。でもまずは、その撮影を実現させなければならなかった。映画を撮る時には、必ずそうした困難が発生する。バックステージで人々は、なぜかリアルに描かせないようにするんだ。僕は常にリアルに描こうとしているのに。リアルな瞬間を求めているんだ。だからアリシアがマイケルのヒゲを剃れるように、何か月もかけてスタジオを説得しなければならなかった。“刃物だから彼を傷つけるかもしれない、危険だ”と言われたけど、“傷つけるわけがない”と僕は反論しなければならなかった。彼らは、事前にスタッフにヒゲを剃らせて、撮影時はシェイビングクリームをつけて剃るふりをすればいいと言ってきたが、僕は“彼女に任せればいい”と提案した。アリシアに“自分で剃ることに抵抗はない?”と尋ねたら、不安げに“大丈夫だと思う、マイケルに聞いて”と答えたんだ。マイケルに確認すると、彼は“問題ない”と言ってくれた。そうやってあのシーンが実現したんだ。演技から自然なやりとりへと移行するのが、あのシーンの醍醐味だね。僕は自分の作品には常にそうしたリアリティを求めている。


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