OUTSIDE IN TOKYO
DEREC CIAFRANCE INTERVIEW

デレク・シアンフランス『光をくれた人』オフィシャル・インタヴュー

2. 監督にとって、役者からの最大の贈りものは“失敗”だと思う。
 それができる人は自らをジャッジしていないから、抑えることなく、すべてを見せている。

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Q:キャスティングはどのように行われましたか?
デレク・シアンフランス:脚本を書きながら、マイケルはトム役にぴったりだと感じていた。マイケルは映画俳優の中でもとりわけ賢明だし、自らの世界をしっかりと頭の中でコントロールしている。でもこれまで、彼の“心”を感じたことがなかったから、善悪と愛の間で揺れ動いているこの役に挑戦してほしかった。マイケルに実際に会って、彼なら出来ると確信したよ。

次に、彼とバランスの取れる相手を探さなければいけなかった。イザベルはトムとは正反対で衝動的に、感情で動く。だから感情に身を委ねられる勇気ある役者を求めていたんだ。キャスティング・ディレクターに、『風と共に去りぬ』(39)のヴィヴィアン・リーや『こわれゆく女』(74)のジーナ・ローランズ、『奇跡の海』(96)のエミリー・ワトソンを探していると伝えたら、“アリシア・ヴィキャンデルに会うべきだ”と言われた。これは『リリーのすべて』(15)や『エクス・マキナ』(15)が出る前の話だ。彼女に会って4時間ほどのセッションを行っただけど、彼女はすべてを出し切ってくれた。自分をさらけ出して、失敗もしてくれた。監督にとって、役者からの最大の贈りものは“失敗”だと思うんだ。役者には悪い演技を見せてほしい、恥をかいてほしい。それができる人は、自らをジャッジしてないからだ。抑えることなく、すべてを見せている。彼女はそれができたのさ。

そういうわけで、マイケルという時代を代表する名優の一人と、アリシアというノンストップで走り続け、疲れを知らないサラブレッドが揃った。2人が互いに刺激し合っているのを、監督として見られたのは光栄だった。昨日の上映を見て、2人をものすごく誇らしく思ったよ。感情的にも精神的にも極限まで突き詰めてくれたからね。彼らはこの映画に魂を捧げてくれたのさ。


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