OUTSIDE IN TOKYO
JEAN-PIERRE & LUC DARDENNE INTERVIEW

ダルデンヌ兄弟『サンドラの週末』インタヴュー

3. 気に入った人には、また出てもらっている人がたくさんいます。
 そんな風にして少しずつマフィア組織が出来ています(笑)

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Q:サンドラの同僚を演じた人たちについてお聞きしたいのですが、彼らは職業的な俳優であったり、そうじゃなかったりするのかということ、そして、単純な質問なのですが、サッカーを子供達に教えている同僚が登場しますね、このシーンがもの凄く素晴らしくて、彼について聞きたいのですが。
リュック:彼は俳優とは言えません、アラン・プラテルというベルギーでとても有名な振付師のダンスパフォーマンスに出演をしたことがあります。彼は素晴らしい感性を持っていて、彼の顔を撮影していると本当にいろんなことが出てきます。それから演技が初めての人、映画の出演が初めてという人が何人かいます。例えば自動車を修理しているお父さんの傍らにいる息子で、サンドラを叩く人、彼も映画は初めてです。それから一番最後に会いに行くドミニク、彼女を助けたいけれど出来ないっていうことを言うドミニクも初めて。それからコインランドリーで話をするあの黒人男性も初めてです。但しそれは映画に出演したことがない人という意味であって演劇の俳優だったりします、アマチュア演劇をしているアマチュアではありません。
Q:今までのお二人の作品には俳優が何度も同じ方が出て来て、言ってみればアントワーヌ・ドワネル的にリアルに成長した俳優達が何人も出ていますよね、同時に、多くの新人俳優を発掘されてきていると思うのですが、今回もこれをきっかけに役者の道に入っていくような人が出てくるのかなと思ったのですが。
ジャン=ピエール:それは私達ではなくて俳優そのものの力によるものでしょう。そうなればいいとは思いますけれど。次回来日の時には何か少しお伝えすることが出来てくるといいですね。
実は今回の様々な端役の中で演劇の俳優が出ていると言いましたけれど、今までの作品に出演している人が結構いるんです。大きい役ではなくて端役ですけれども、気に入った人にはまた出てもらいたいので、また出てもらっている人がたくさんいます。経営者のデュモン社長は、『少年と自転車』(11)で最初の方に出てくる教育担当官、それから『ロルナの祈り』(08)の中では死体置き場の所長として、ロルナが死んでしまったクローディの服を持ってきた時に彼に会っています。それからジュリアンという男の子は『少年と自転車』ではサマンサのボーイフレンド、『ロルナの祈り』では警官、それから息子と一緒に自動車を修理している父親の方は『ロルナの祈り』では鍵を直している人、それから『少年と自転車』ではブリュノがアクセサリーを売りに来た時にそれを買い取る人、そういう風に何度も出てもらっています。掃除をしている夫の奥さんの役をやっている人は『少年と自転車』でラストのところで本屋さんと決着をつけるところで裁判所で判決の長いスピーチをする判事さん、と、まあ、こんな風にして少しずつマフィア組織が出来ています(笑)。
Q:そういう俳優さん達をいろいろ次の作品にというのは、お二人がキャリアを重ねてきてのことだと思うんですけど、お二人とも60代に入られて映画人としてのキャリアも40年ぐらい過ぎてきたわけですね、例えば60代、70代の監督さん達があと何作作れるかなとか、そういうことを考え始める監督さんに何人かお会いしたりするんですけど、お二人の中では今考えていることというか、どういう感じなんでしょう?映画に対する情熱は衰えていないのか、ちょっと疲れたとか(笑)。
リュック:ステップ・バイ・ステップで今は、次回作のことだけを考えています。年末クランクインの予定です。今やっていることだけ、次の作品のことだけを考えるのだけれども、例えばシナリオを書き始める前に今までいくつもアイデアがあって、何度もお互いに話し合ってきて実現しなかったものがたくさんあります。ですからそれについてあのシナリオの初めのアイデアがあったけどあれはどうだろうかと言って話し合ったりします。そのアイデアが一年前のものであることもあるし、二十年前のものであることもある、こんな風に結局何度も昔から話題になってきたことをまた次の映画にするのかもしれない、そういうことは初めの頃にはなかったです。あと、また何か社会で大きな出来事が起きて、自分達の人生に何かが起きて、全く今まで話し合ったこともないようなアイデアを映画にするかもしれませんし、それは分かりません。いずれにしろ次に作る作品のことだけを考えています。私の場合は、例えば2〜3本常に用意してあって、この次がこの次とか決められるようなタイプではない、次の次の作品のことなどは考えていません。
ジャン=ピエール:自分自身の終りを考える年が来たっていうことが日本に来て分かって良かった(笑)。
リュック:辞めないで映画を撮り続けるだろう、あの世にいってしまうまで続けるだろう。
ジャン=ピエール:あと2〜3本ですかね。
Q:100歳でもまだ映画監督をやってる方、オリヴェイラ監督とかがいらっしゃいますから(笑)。
リュック:ランボーは18歳(※20歳代前半、とも言われている)で詩をやめてしまいましたが、それもまた格好いいですね。
Q:アラン・レネは91歳まで撮り続けました。
リュック:黒澤明は何歳まで撮り続けましたか?
Q:確か、80歳代だったと思います(遺作『まあだだよ』の公開時、黒澤明は83歳だった)。
ジャン=ピエール:今、63歳なので80歳になるまで17年あります(笑)。
Q:『イゴールの約束』以降、三年ごとに撮ってらっしゃいますね。
リュック:少し急ぎましょう(笑)。寿命を長くするために煙草をやめましたので。

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