OUTSIDE IN TOKYO
EMMANUELLE DEVOS & MARTIN PROVOST INTERVIEW

エレノア・コッポラ&ダイアン・レイン『ボンジュール、アン』インタヴュー

4. 新しい経験に身を任せること、
 その経験をその瞬間瞬間でしっかり味わうこと(ダイアン・レイン)

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Q:今までエレノアさんはドキュメンタリー映画はいくつも撮られていますが、今回、フィクションを初めて監督されたということで、ご自分の中で、今までの映画に対する見方が変わったようなことはありましたか?
エレノア・コッポラ:ドキュメンタリーとフィクションは全く両極端のものです。ドキュメンタリーは、人生の中で本当に起こっていることを、ありのままの瞬間をカメラに収めます。ドキュメンタリーの場合は、途中で何か問題が起きたりすると、かえって作品は興味深いものになる。何か危機が起きて、それに対応していくと、映画に新たな色彩が加わって、より面白くなるわけです。でも、今回のようなフィクションの場合は、そういう危機が起きたら、自分で解決しなければいけないわけで、私にとってはまったく新しい経験でした。ですから、この映画を撮ったことで、映画監督たち、私の家族の面々に対しても、共感と言いますか、同情と言いますか、そういう思いが非常に強まりました(笑)
Q:エレノアさんは、この作品に少し出演されていましたね。ピンク色のブラウスを着て。何故出ようと思われたのでしょうか?
エレノア・コッポラ:(笑)あれは、たまたま椅子に座って撮影の準備を待っていたんです。それで、準備が出来ましたという言うので、モニターを見ようと立ち上がったのですが、カメラオペレーターやスクリプト・アドバイザーといった撮影クルーの人たちから、そこにそのまま座っていてと言われて、そのまま撮られてしまったのです。
ダイアン・レイン:より興味深いショットになりましたね(笑)
Q:撮影クルーに嵌められてしまったと(笑)
エレノア・コッポラ:撮影も終り間近の時でした。本当に、あっという間に撮られてしまったのです。今、振り返ってみると、もっと美しい女優さんたちがカンヌには沢山いるんだから、彼女たちを使うべきだったと思いますよ。でも、自分に言い聞かせてるの、なぜあんなおばあちゃんが居たかっていうと、あの美しい子達もいずれこうなるんだよっていうことを示すためのショットだったと、そういう風に自分では理由付けています(笑)
Q:あのシーンは、カンヌでの場面ですよね、あれは最後に撮られたっていうことですか?
エレノア・コッポラ:そうですね、順撮りではなかったですから。男優(アレック・ボールドウィン)が来るのを待っていたんです。カンヌを車で出発するシーンは、ずっと先に撮っていました。ですから、このシーンを撮影したのは、カンヌ映画祭の最後の最後、5月のことです。ホテルの内部とかを撮影したのは8月でした。
Q:面白いですね。
エレノア・コッポラ:映画のマジックですよ(笑)
Q:全くその通りですね。ダイアンさんにお尋ねします。『アウトサイダー』(83)とか『ランブルフィッシュ』(83)の頃から拝見していますので、今日はちょっと緊張していますけれども(笑)、最近の作品では『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(15)という素晴らしい作品もありましたが、今回の作品は凄く親密な雰囲気のある映画ですね。この映画の現場はどういう雰囲気だったのでしょう?フランス映画的な感じもありますけれども。
ダイアン・レイン:たくさんの監督が口にした言葉で、黒澤明監督だったかもしれませんが、環境というものが、物語あるいはストーリーテリングに影響を与えることは明白です、フランスじゃない場所で撮っていたら、全く違う作品になっていたことでしょう。あとフランス語に関して言うと、日本語字幕版でも反映されていますけれど、敢えてフランス語の訳は入れてないんですね。なぜかというと、アンがちょっと異国の地で迷子になってるという状態を観客の皆さんにも知って頂きたいからなんです。私自身、演じていて気付かなかった部分もあるかもしれませんが、アンが自分でコントロールをとれてない状態っていうのをより誇張するような瞬間があったと思います、自分の意見を持っていても結局ジャックに言われて受け入れてしまう、そういう立場になることを、彼女は受け入れなければいけなくて、そうした道のり自体も一つのメッセージとして受け止めて頂けるんじゃないかなと思います。新しい経験に身を任せること、その経験をその瞬間瞬間でしっかり味わうこと、最後には結婚するのかしらこの二人、とか、そういうことの顛末ではなくて、映画の登場人物が味わっている、その瞬間瞬間を観客の皆さんも味わえる、そういう映画になっていると思います。
Q:最後にダイアンさんにイエス、ノーだけでいいので聞かせてください。娘さんのお名前がクレジットにありましたね。
ダイアン・レイン:イエ~ス(笑)、私の娘です!彼女は写真と電話で出演しています。


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