OUTSIDE IN TOKYO
Catherine Corsini INTERVIEW

カトリーヌ・コルシニ『黒いスーツを着た男』インタヴュー

2. フィルム・ノワールという枠の中で社会階層の衝突を捉え、現代フランスの社会問題に迫る

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OIT:そのモラルの部分もすでに構成済みだったのですか?
CC:そうです。脚本を書く段階から。探偵小説の視点と、もっと深く掘り下げた人間の問題を考えていました。そんな世界を描きたいという意図を(あらかじめ)抱いていました。つまり、男としての名誉、裏切り。また家族関係という要素を軸に展開したいと考えていました。

OIT:そんなノワール的なバランスというかウエイトは、どの程度を考えていましたか?もちろんノワールだけではないと思いますが。
CC:そこで社会的な問題を捉えたいと考えていました。特に現代フランスの社会問題に迫りたいと。寓話と考えられているジャンルですね。フィルム・ノワールというと寓話的なものとして捉えられますが、同時に、非常に現実的な側面もあるわけです。それは社会階層の問題であって、フィルム・ノワールの中で社会階層の衝突というものを捉えながら描き出したかったというのがこの映画を作る上での意図です。それぞれ(棲む)世界が違い、求める利益が違う者たちの絡み合いです。前作『旅立ち』でも、この社会的な問題をとり上げています。それはお金です。罪を犯した者のラブストーリーになっていますが、その中でお金の問題を扱っていました。今回の作品では、そんなお金が、お金を払えば人間の命を購うことができるかということがテーマになっています。だから先ほどの答えとしては、フィルム・ノワールが80%で、その上で社会的な要素がベースとなっているのです。

OIT:細かい構成は現場で変えていったのですか?
CC:第一作を撮った頃と、今は変わっています。昔は撮りながらずいぶん変えていったこともありましたが、今はある程度経験を積んできたので、ほとんど撮影段階で脚本を変えることはしていません。また編集段階でも、シナリオに忠実に編集する方針でやっています。

OIT:それを俳優やスタッフに伝えるためにどのような方法をとっているのでしょう?脚本だけですか?それとも絵コンテなどを使って伝えるのでしょうか?
CC:それは製作現場です。小さな図書室のようなものを設けて、そこにフィルム・ノワールの(ジャン=ピエール)メルヴィルやファスビンダーの映画の雰囲気を理解してもらうように、映画作品とか写真、セットなど色々と雰囲気を掴んでもらう資料を揃えてみんなに見てもらいました。



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