OUTSIDE IN TOKYO
CARLOS VERMUT INTERVIEW

カルロス・ベルムト『マジカル・ガール』インタヴュー

4. 嘘だということが分かっていながらその世界に入っていく、それこそが魔法です

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Q:お酒のボトル、セーラームーンでしたね。
カルロス・ベルムト:そこに気付いた人はそんなに多くないです。

Q:ほんとですか(笑)。
カルロス・ベルムト:あなただけのディティールです。

Q:マジックというのもキーになるのかなと思ったのですが、先程、謎のままでとおっしゃっていたのとちょっと関連してくるのかなと思うんですけど、魔法少女ユキコもそうですし、あと冒頭とラストがマジックで繋がっている感じですね、監督にとってマジックというのはどういうものなのか。お話としては、凄くひどい話ですよね、でも、マジックでなんとなく、すっとすかされる感じがあって、あとに広がる余韻みたいなものが感じられて、もしかしたら人生にはそういうものが大事なのかなと思ったりしたのですが。
カルロス・ベルムト:そうですね、自分は先ほども言いましたように理性的な人間なので、どんどんと魔法がなくなっていってる人生を今歩んでいる気がします。何事にも説明を求めてしまう自分がいる、でもそういうのを感じながら魔法のない世界というのは非常に退屈だと思います、同時に、魔法のない世界の方が平和だとも思います。あとは、魔法には宗教的なことが絡んできますが、私は無宗教ですから一切信じません、だから魔法というものは、自分の人生の中では最も遠い所にあるものなのかもしれません。

Q:もし出来たら何をやります?
カルロス・ベルムト:好きな時に東京に来られること。私にとって唯一の魔法というのは、こうやって色々な俳優さんと一緒に映画を作って、みんなこれがフィクションというか、嘘だということが分かっていながらその世界に入っていく、それこそが魔法だと思います、ですから私はアートが魔法だと思います。

Q:この映画を観ると監督の物語を語る欲望みたいなものを凄い強く感じるんですけど、それは元々どこから来ているのでしょう?
カルロス・ベルムト:それも本当に魔法の一つで、なぜ子供の時から書いているのか、なぜ難しいと分かっているのに毎朝起きて映画を作ろうとするのか、脚本を書こうとするのか、こうした行いこそが魔法だと思います。本当にそれが自分でも分からないからです、他の人みたいに世界を変えたいとか全然思ってないし、ただ自分の内にあるものを誰かと分かち合いたいという気持ちはあります、でもそれがなぜそう思うのか、なぜそういう衝動がくるのか、自分では本当に分からないのです。もしかすると地球の裏側だったり、全然違う所の誰かと繋がりたいっていう気持ちはあるかもしれません、でもそれは自分で考えて敢えて答えを出そうとしたものなので、本当は何が駆動力になっているかというのは分からないんです。


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