OUTSIDE IN TOKYO
BI GAN Interview

ビー・ガン『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』インタヴュー

2. 自分は設問者である、質問を投げ掛ける側だと思っていますので、
 それぞれの人が異なる解釈を答え合わせしてくることを、僕は楽しんでいます

1  |  2  |  3



OIT:『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』の中の具体的なシーンに関してお聞きしたいのですが、子ども時代のホワイト・キャットがスクーターの二人乗りで主人公ルオ(ホアン・ジエ)を“ダンマイ”に連れて行くと、そこには車のボンネットを開けて修理をしている男がいます。『凱里ブルース』にも、主人公がスクーターの二人乗りで道案内をされる長いワンショットのシーンがあって、目的地に到着すると同じように車のボンネットを開いて修理をしている男がいるというシーンがあります。この類似には何か意味がありますか?
ビー・ガン:それは偶然です(笑)。特別に何かの仕掛けをしたという意図はありませんでした。

OIT:そうでしたか(笑)。『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』の3Dパーツは色々なところで賞賛されている通り、本当に素晴らしいのですが、この映画の照明はウォン・カーウァイ組のウォン・チーミン(黄志明)が担当していたり、音楽をリン・チャン(林強)が担当していたり、素晴らしいスタッフが揃っています。しかし、何より素晴らしいのは、この映画が人間のリアルな感情を描いている点だと思います。主人公のルオは二人の女性を追い求めますが、ひとりはファムファタール的女性で、もうひとりは母親です。シルヴィア・チャンが演じる母親はルオが子どもの時、ルオを置いて家を出て行ってしまう。夢なのか、映画内映画というべきなのか、その中で母親と再会したルオはあなたから大切なものを奪いたいと言って“時計”をもらいます。この“時計”というのは、監督の映画の中では単なる“時計”である以上に、“時間”そのものとして描かれているように思えたのですが、そのような意図はありましたか?
ビー・ガン:時間そのものという意味ではなく、ルオと母親とのやり取りというのは、言葉で説明出来るものでもないのですが、例えば、夢から醒めたら、私はもういないとか、私こそがあなたの大きくなった子どもであるとか、そういったやり取りはしない中で、たった最後に絞り出せた言葉が「わたしはあなたから大切なものを奪いたい」という言葉だった。その差し出した時計というのは、その女性の持ち物の中で本当に最も貴重な物だったとは思う、それはその人が愛する人からもらったボロボロの時計であるのかもしれない、それはその女性が最も価値のあるものは何なのかを考えた末に差し出したということに過ぎません。

OIT:“時計”は『凱里ブルース』でもシンボリックなモチーフとして出てくると思います。殺された子どもが父親の夢に出てきて、僕の時間を返してほしいと言って、“時計”をねだるというエピソードがありました。そこでも“時間”が“時計”に直接的に置換されていると思ったのですが。
ビー・ガン:そうですね(笑)。まず作品を作る上で、自分は設問者である、質問を投げ掛ける側だと思っていますので、それぞれの人が異なる解釈を答え合わせしてくることを、僕は楽しんでいます。

OIT:リン・チャンの音楽や、ズオ(チェン・ヨンゾン)が歌う唄も素晴らしかったのですが、サウンドトラック・アルバムは発売されているのですか?
ビー・ガン:中国ではレコードが発売されました。限定版で最初に出したものは売り切れてしまいましたが、また追加で生産するのかどうか、僕は把握していないんです。でもネットで買えるのはないでしょうか?「タオパオ」(中国の有名なオンライン・ショッピングサイト)というサイトで検索すれば出てくるかもしれません。



←前ページ    1  |  2  |  3    次ページ→