OUTSIDE IN TOKYO
Anais Demoustier INTERVIEW

アナイス・ドゥムースティエ『彼は秘密の女ともだち』インタヴュー

3. 歌のシーンは、リハーサルなしでいきなり撮影しました

1  |  2  |  3  |  4



Q:オゾン監督の現場が凄くスピードが早いという話がありましたけれども、何度もテイクを繰り返したシーンはありましたか?
アナイス・ドゥムースティエ:何シーンかはテイクを繰り返したのもありますが、そんなに記憶に残るほど何回も取り直したということはなかったですね。例えばハネケ監督の場合(『タイム・オブ・ザ・ウルフ』)は、1シーンに49テイクも撮ったことがありました。(笑)オゾン監督の場合はそんなことはなかったです。

Q:事前にリハーサルを入念にするとか、撮影が早く済む秘訣はあるのでしょうか?
アナイス・ドゥムースティエ:今回、私の場合は、いつもの倍くらいの役作りをして望みましたので、信憑性のある役柄を演じることが出来たという感覚もありますし、先ほど申し上げたように、オゾン監督は自らカメラ位置を決めて、どういう動きをするかということを的確に把握しているということもあると思います。他の撮影現場では、撮影監督がどこからどう撮った方がいいか、色々試してみるけれども、欲しいものが分かってないから満足しないというようなことも起こります。オゾン監督の場合は、すべてを把握されているので、何テイクもしないで済むのかもしれませんね。

Q:先程もお話しに出たニコール・クロワジールさんの「あなたとともに」という70年代の曲ですが、ドラァグクイーンが歌うのと、最後の方でアナイスさんもお歌いになります。この歌のことは元々ご存知だったのか、フランスではポピュラーな曲なのか、アナイスさんは、とても上手にお歌いになっていましたが、練習はされたのか、といった辺りのことを教えてください。
アナイス・ドゥムースティエ:歌のシーンは、始めからシナリオにありましたので、ちょっと練習をしたいということをオゾン監督にはお伝えしたのですが、リハーサルなしでいきなり撮ることになってしまって、自分では大いに不安を抱えながら撮影に望みました。あのシーンは鍵となる重要なシーンですから、リスクが高いですよね。この映画自体、少しおとぎ話的なストーリーでもありますので、眠れる森の美女が王子様のキスによって目覚めるように、自分はヴィルジニアを目覚めさせるためにあの歌をプレゼントしている、そういう感情を込めて歌いました。また、おっしゃる通り70年代の曲ですので、私はちょっと世代が違うことから知らなかったのですが、フランスではとても有名な曲です。

Q:先程、オゾン監督がクレールが徐々に変わっていく姿を描くというお話がありましたけれども、撮影方法は順撮りだったのか、順撮りではなかったのか、順撮りであれば自然に感情の変化も演じられると思うのですが、そうでなかった場合はどのように演じたのでしょうか?
アナイス・ドゥムースティエ:順撮りではなかったです。今回のロケはフランスとカナダで行っています。オゾン監督が、地域が特定されるような場所ではなく、普遍的でどこでもありそうな場所として描きたかったので、敢えて特定されにくいロケーションが選ばれました。オゾン監督的には、パリの郊外よりもモントリオールの郊外の方が綺麗だと感じたということで、一部屋の外の撮影はカナダでやろうということで両国でやることになりました。従ってカナダはカナダの撮影、フランスはフランスの撮影ということになったので順撮りではなくて、その場その場に応じて演じて行くことになりましたけれども、役者として順撮りじゃないことには慣れていますし、事前準備の役作りや脚本を読み込んでいる段階で、このシーンは変化のどの段階だということは把握していますから、特に困ることはなく自然に演じ分けることが出来ました。



←前ページ    1  |  2  |  3  |  4    次ページ→