OUTSIDE IN TOKYO
ABEL & GORDON INTERVIEW

アベル&ゴードン『ロスト・イン・パリ』インタヴュー

6. 言葉とは裏腹に体が勝手に動いてしまうということが時としてあります。
 そうしたことに私達は興味を持っていて、情熱を感じています

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OIT:原題の『Paris Pieds Nus(裸足でパリ)』というタイトルについてお聞きしたいのですが、お二人の作品は、裸足でお二人が登場する場面が多くて、その他の映画で観る以上に足が活躍している映画だなと思っていたのですが、今回はついにタイトルにまでなっています。
ドミニク・アベル:“足”というのは一番プライベートな部分で、一番不完全な部位でもあると思うんです、特に私達はもう50歳を超えていて決して綺麗な形とは限りませんし、だからこそ面白くて、とりわけ足というのは一人一人違っていて個性が出る部分だと思うんですね。私達は頭のてっぺんから爪先まで全部を使った体の表現というものに興味を持っているということもあって、足を意識しているわけです。“言葉”というのは、人が氷河だとすると氷山の一角に過ぎなくて、その一角の下に更に大きな氷が隠れていて、それが足であったり、手であったり、胸であったりするということだと思っています。ですから、足は他の人とは違う自分自身を物語る要素として非常に重要だと思っています。最近、フランスでは、マクロン氏が大統領に選ばれましたけれども、その時に身体言語ということが凄く話題になったんです。今では映画も科学的に分析される対象になってきましたけれども、私達はそうした点に昔から凄く興味を持っていました。“言葉”は正確さとか、知的な部分を表現しようとしますけれども、言葉とは裏腹に体が勝手に動いてしまうということが時としてあると思うんです。言葉では大丈夫って言っても、体は大丈夫じゃないということを現していたり、そうしたことに私達はとても興味を持っていて、凄く情熱を感じています。
OIT:マクロン氏の身体的な言語が話題になったというのはどういうことだったのですか?
フィオナ・ゴードン:専門家の分析ですけれども、かなりマーケティング的に体の動きも一生懸命勉強してコントロールしているということが言われました、聞いている人達を安心させるような体の動きを学んだと言われています。街中に出て人と接している時は暖かい部分、人間味を自然に発していたということで、専門家は、そうした身体表現をコントロールしている時としていない時があると分析していました。
ドミニク・アベル:トランプ氏と会う時に、トランプ氏が凄くギュッと握手をして自分の方が支配者だぞっていう雄の部分を出すということがよく知られていたので、マクロンもそれに負けないぞっていうことを現すための握手の仕方を練習したそうです、しっかり長くギュッと握る練習をしたと、そういうことが言われていましたね(笑)。
フィオナ・ゴードン:いわゆる身体的な表現の解読っていうのはまだ凄く単純で、実際の本当の体の動きっていうのはもっと複雑だと思うんですね。だからあまりマーケティング的な方法というのは上手くいかないんだと思います。例えば、握手の仕方とか、椅子は相手よりもちょっと高く座った方がいいとか、そういうことはちょっと馬鹿げているし、現実とはちょっと離れたものではないかと思います。
OIT:次の作品でそういうシーンが入ってきたり?
フィオナ・ゴードン:私達はSPを見るのが好きなんです、政治家っていうのは自分のイメージはコントロールしようとしますけど、周りの人達のことまではコントロールが及ばないので、そのSPの人達が凄く硬直して硬くなっていたり、あるいは居眠りして眠たそうだったりっていうのを見ると面白いですね。

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