OUTSIDE IN TOKYO
ABBAS KIAROSTAMI Interview

アッバス・キアロスタミ『トスカーナの贋作』インタヴュー

3. 脚本の段階では120分くらいの映画になりそうだったが、最後の15分を変えて今の尺になった

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OIT:今回イタリアでの撮影いうことで、イタリアのとても素晴らしい撮影監督ルカ・ビガッツィと仕事をされましたが、彼とのエピソードというのはありますか?
AK:映画の冒頭、一番最初に太ったイタリア人が出てくる、「それでは作家にご登場頂きます」という台詞を言う、彼がプロデューサー(アンジェロ・バルバガッロ)なのですが、プロデューサーとすごくいい関係にありました。そして、私は、ルカとはもちろん初めての仕事だったわけですが、彼はやはり素晴らしいと思っています。全くスノッブではないし、彼と私の間では“Let’s see!”、まずはやってみよう!という共通感覚があって、全てのものをまあやってみよう、とりあえずやってみようっていう感覚で、すごく気持ちよく仕事できた。それが一番の思いですね。メイキングがあって、そのメイキングを見れば分るんだけど、初めの週はお互いに戸惑ったりしている、もちろん初めて仕事するわけですから。でもその二週目からすごく気持ちよく仕事を一緒にしているっていうのが見て分ると思います。ルカとの仲の良い姿が写っていますよ。

OIT:脚本はほとんど変えなかったけれども、撮影の現場で監督はかなり臨機応変に動いて撮影をしたというスタイルだったんでしょうか?
AK:そうです。毎日撮影して、夜は編集していたんですよ。毎日撮影して夜編集するとだいたいの時間が手に入るんですね、だから脚本の段階では今の尺より長かったんです。撮って編集して撮って編集して75分になった時、あ、これはこの脚本にそって撮影すれば絶対120分くらいになるんじゃないかと分ったので、それで終りの15分を変えたんです、現場で撮影しながら。それで今の尺になったんです。

OIT:夜のシーンがないので、夜は編集の作業をしたということなんでしょうか?
AK:その通りです、詳しいですね(笑)。毎日だいたい夕方5時、6時くらいに撮影が終わって太陽が落ちて、自分は写真(スチル)を撮って暗くなると夜12時まで編集して、だから映画の撮影が終わった時ワンカット出来てるんです。それをプロデューサーと一緒に見る。

OIT:じゃあワインとか食事を楽しむ余裕は?
AK:とっても楽しかったです(笑)。ストレスとか全然なかったし。2ヶ月撮影していて、問題とかぶつかりあいとかも何もなかった。朝7時から夕方4時、5時くらいまで仕事をしていて、あまりにも楽しくてエネルギーが有り余っていたから5時過ぎにもう一本撮ろうかなって思ったくらいです(笑)。ところで、あなたは映画を勉強したんですか?映画を作ってるの?

OIT:僕は映画について書いています。フィルムスクールに行ったことはありますが、学生時代は英文学を専攻していました。
AK:映画制作自体にとても詳しいから。映画を作ったことはないんですか?

OIT:学校で短編を作ったことはありますけど、、、僕のことはともかく。次は日本で撮られるということで、日本の観客はとても喜んでいます。
AK:自分も楽しいですよ。

OIT:日本にも若くて才能がある映画作家が沢山出て来ています。
AK:映画を勉強して友達が一杯いるのでしょうから、今教えてください(筆者注:正確には映画制作について学んだのはニューヨーク大学などで1年程授業を受けた程度です。従って日本にそのような友人はほとんどいません)。キャスティングで70歳くらいの優しい文化人の顔をしている役者を教えてください。要するに優しくて見ると尊敬できるような、大学教授みたいな人。

OIT:実際の大学教授ではだめですか?
AK:自信をすごい持っていて、ちゃんとカメラの前で演技してくれる教授だったら全然大丈夫。今すぐじゃなくてもいいから教えてよ。

OIT:それは実際に次の構想されている作品のキャスティングですか?
AK:そうです。

OIT:では一時間以内にメールで、今は緊張していて出てこないんです。
AK:一時間以上でもいいです。2、3日考えて。

OIT:はい、わかりました。僕が言いたかったのは、日本には若い才能がある作家が沢山いるので、監督の日本での撮影が彼らにすごく良い影響を与えることになってほしいということです。次の作品も本当に楽しみにしています。
AK:出来るだけ早く映画を撮影したいと思っていますよ。

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