OUTSIDE IN TOKYO
SONO SION INTERVIEW

園子温『希望の国』インタヴュー

3. 希望があるかどうかというより、とにかく希望を持たざるをえない

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OIT:取材段階では、20km圏内に入って結構見に行ったんですか?
園子温:ええ、今年の初詣は福島20km圏内で過ごしたんで。圏内に海があるんですけど、そこで凄く奇麗な初日の出を見た。意外と好き者が集まってるんじゃないか、そういうとこで見たいっていう人が全国にいるんじゃないかと思ったんだけど、やっぱりいなくて僕一人っていう状態で見て、やっぱり凄く感動した。そういった色んなものの積み重ねから出来た映画ですね。

OIT:そうですね、最後に希望は残されたのでしょうか?
園子温:それが希望かどうかというより、とにかく希望を持たざるをえない。また『ヒミズ』と同じになるけど、希望は持たざるをえないだろうっていう結末なんです。心の中に希望を持てっていう、目に見えるもので希望は存在しないかもしれないけど、自分の中に希望さえあればなんとかなるんじゃないかっていう風に思うことなんです。それが大切だというのが精一杯、今んとこ精一杯かなという気持ちのラストだけど、それでいいと思うんですよ。それに美味しい苺、シュークリームみたいなの乗っけて、甘くしても意味ないんです。別に嘘ついて幸せになったってしょうがないんですから。いま出来る所でやってこう、それでも十分だと思うんですよ。

OIT:これを早く撮ってしまいたいっていう気持ちで、もうすぐ撮影に入られたんですか?
園子温:三日後くらいにまた福島へ行きます。

OIT:それも関連性はあるんですか?
園子温:もちろん、終わりがないですからね。

OIT:それはやり残したことに対する何か?
園子温:やり残したことが全部終わるまでは終わらないことになると思う。

OIT:じゃあまた物語の語り方が変わってくるっていうことですか?
園子温:次が物語なのかどうかもまだ分からない、とにかく風景を撮っていくんです。行くたびに福島の風景を撮影しようと思ってて、また変わってってしまうだろうし、解除された場所がどんどん風景が変わってくるから、それは撮っとかないとなって。

OIT:じゃあ、まだまだそのテーマで続いていく可能性があると。
園子温:可能性どころじゃなくて、もうやるしかない。

OIT:『ヒミズ』に入る前に逆にこういうものをと、考えてたことは?
園子温:特にないです。

OIT:寝かせてたこととかはないですか?撮らないで、とりあえず『ヒミズ』とこの作品にいくまでに別のものをやろうと思ってたことってないですか?
園子温:やれるものがあればやりたいとは思ったけど、やっぱりこっちが先だと思った。そんなに器用じゃないですし。もうちょっとゆっくり撮ってもいいかなと思ってます。これ以上にまた焦るものは今んとこはないですから。焦らずに撮りたいものはやっぱりいくつかあるんです。福島の山へ行くと、山頂の方に飼い猫や飼い犬が野生化して森の中に暮らしてるんだけど、あれは一体どうなるだろうって、これは長い目で見ないと想像の中では何も分からないですから。もしかしたら狼みたいな新しい猫か山猫が生まれるのかなっていうのがあって、一体どういう暮らしをするんだろうって、そういうのも興味深いし。それは今すぐ提示する話じゃないから、そういう意味でゆっくり撮影したいものがいっぱいあるんですよね。

OIT:それはドキュメンタリーっていう可能性はないですか?
園子温:ドキュメンタリーになるかもしれないし、分からない。それは想像がつかないですね。でもやっぱり日本人として僕は後悔したくないから、自分が映画監督でやってるんだったら、やり続けといた方が後々自分の気分が悪くならないだろうと、それがあってやってます。
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