OUTSIDE IN TOKYO
Mehrdad Oskouei Interview

メヘルダード・オスコウイ『少女は夜明けに夢をみる』インタヴュー

4. 作家・批評家のスティーブ・エリクソンは私のレトロスペクティブを、
 ニューヨークのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスでやってくれました

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OIT:音に関して聞きたいのですが、ハーテレが出て行く時に音楽がちょっと被さりますが、シャガイエが出る時は被さっていませんね。そこはどのような意図があったのでしょう?
メヘルダード・オスコウイ:ハーテレはもの凄く純粋にかわいそうな子です。釈放されていきますが、出迎えに来た二人は実はこれから彼女をもっと暗い谷に突き落とす人たちだったのです。ですからハーテレの気持ちを考えて、振り向いて手を振る場面で自分の気持ちをもっと伝えたくて音楽を入れたのです。もう一人のノーバディ(シャガイエ)は、銃を持って窃盗している子だから強い子なんです、だから彼女が出て行く時は少し音を落としています。ハーテレに関しては、釈放されて出て行った時に本当に心配していたのですが、残念ながら心配の通りになって、彼女はもっとどん底に落とされてしまった。

OIT:この映画を観て、キアロスタミの『トスカーナの贋作』(2010)を思い出しました。『トスカーナの贋作』の中に「冬枯れの庭」という詩が登場して、”木の葉は枯れてしまって、葉は残っていない、それでも木は美しい”というウィリアム・シメルの台詞が出てきます、その場面のことを思い出したのです。ちょうど冬の庭が写っていたものですから。
メヘルダード・オスコウイ:感動しました。細かく観ていただいてありがとうございます。実はこの映画や他の作品の上映のために海外に行って、フランスの批評家の何人かとアメリカの作家・批評家であるスティーブ・エリクソンから、あなたの作品を観るとキアロスタミを思い出すと言われたのです。キアロスタミの映画をよく知っている人達からは、そう言われるんですね。でも私の映画には車も出てこないし、オリーブの木もな出てこない、全く同じ映像を撮っているわけではないのですが、それでもなんとなく私の映画を観るとキアロスタミの映画をよく知っている人達は、キアロスタミを思い出すと言ってくれるのです。私はそれを隠せません、キアロスタミ監督、小津監督、ブレッソン監督からはたくさんのことを学びましたから。

OIT:小津も思い出しましたよ。
メヘルダード・オスコウイ:どのシーンが小津的だったんですか?

OIT:カメラが動かないというところがまず一つ印象として小津的であると思いました。そして、小津の”ピローショット”のようなショットがありますね、靴がいっぱい置かれているショットとか、人物のいないショットです。
メヘルダード・オスコウイ:まさしくそれは小津から学んだものです。あなたように撮り方の分かる方には映画を観てほしくありませんね(笑)。すべてバレてしまいますから。スティーブ・エリクソンは私の作品のレトロスペクティブを、アンソロジー・フィルム・アーカイヴスでやってくれました。

OIT:ニューヨーク、ジョナス・メカスのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスですね。
メヘルダード・オスコウイ:そうです。エリクソンは、キアロスタミが亡くなった時に、もう私が愛したイラン映画は終わってしまった、残念だと思っていたら、私の映画と出会って安心したと言ってくれたのです。



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