OUTSIDE IN TOKYO
KOBAYASHI KEIICHI INTERVIEW

小林啓一『ももいろそらを』インタヴュー

5. ジャンルでどうしても人を決めつけちゃうところがありますけど、
 そういうのは本当はあっちゃいけないと思うんです

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OIT:物語を動かす部分で、お金を拾って、高校生なんだけどちょっと経済活動的な事をやってるわけですよね。お金を扱うことによってちょっと失うものがある、これは大人が働く代わりに色々なものを失っていくのと同じ事ですよね。
小林啓一:そこまで実はインテリジェンスに考えられる感じじゃないんです。お金っていうのは日常的に一つの大きな問題なので、なんか凄くリアルなものに感じられる。それで物語っていうのはお金と共に動くというか。お金拾ったものがちょっと増えて帰ってきちゃって使い道が分からないみたいな話は最初から大まかには決めてたんです。実際、脚本は本当にすらすら書けて、疲れたから今日はここまでにしようかみたいな感じで、それでもう一ヶ月半くらいで書き上げたんです。

OIT:親が出てこないですね、家庭が出てこない、そこは、今回は敢えて省いたっていう感じですか?
小林啓一:親の影響って凄くあると思うんですけど、そうすると人のせいにするっていうか、親のせいとかになってしまうような気がしたんです。こんな社会が悪いんだみたいなことではなくて、“元気”っていうか、与えられる事よりも与えていくようなものにしてかなきゃいけないなって思ったんです、映画自体が。なので、そういう被害者意識みたいなのが少しでも出ちゃうと、凄く興ざめしちゃうっていうか。何かそんなのばっかりだから、やっぱりそこを改善してかなきゃいけないんじゃないかなっていう風には思ったんです。人のせいにする時は自分のせいみたいな。

OIT:冒頭に2035年の日記から振り返るという設定がありますね。それで白黒なのかもしれないんですけど、そうしようとしたのはなぜですか?
小林啓一:まさにそれで白黒っていうのも凄く大きな理由なんですけど、僕がこの年になって若い頃悩んでた事とか、考えてた事って、そんなに変わってる訳ではないんですけど、ただ世の中的には凄くそこに差があるような描き方をするし、昔は馬鹿だったみたいな感じの事になってますけど、実際はそんなに変わってないと思うんですよ。そういう事をなんか上手く言えないのかなと。自分じゃなくて他の人とか時代を超えて昔の人だとか、これからの人も多分そんなに変わんないんじゃないかなって思うんですね。ずっと悩み続けるものですし、問題は変わってるかもしれないですけど、あんまり行為とか根本は変わってないはずなんで、なんかそういう事を上手く言えないかなっていう風にずっと考えてたんです。その結果、じゃあ未来から見てどうかなっていうことに。上手く言えないんですけど、2035年って、なんか上手いこと言いたいんですけど、言えないんですよね(笑)。

OIT:世の中に色々な問題がある中で、変わんなきゃいけないとか、変わった方がいいとか言い勝ちですが、それをこのスタイルに落とし込もうとしたっていうのは面白いですね。
小林啓一:ありがとうございます。先入観とか、人を簡単にレッテルで決めつけてしまうみたいなところがあって、女子高生だからとか、男子高校生だからとか、大学生とか、ニートとか、色々あると思うんですけど、ジャンルでどうしても人を決めつけちゃうところがありますけど、そういうのは本当はあっちゃいけないと思うんですよね。

OIT:画も新鮮でした。川沿いとか、道路沿いのロケーションとか。ロケーションは結構選びましたか?
小林啓一:そうですね、結構選びました。

OIT:郊外ですよね、しかもあまり目印がない。
小林啓一:田舎でも都会でもない、普通のベッドタウンに近い感じの、街の人達っていうのが一番取り上げられない所だと思うんですけど、そういう人達こそ一番大事なんじゃないかなと思って。

OIT:人口としては多い部分ですよね。
小林啓一:だからそこをなんでみんな取り上げないのかなっていうのがあって。貧乏人を取り上げて愛が大事ですとか、お金より愛とか言ってるのとか、なんか言い尽くされちゃってるし、僕がやんなくてもいいなっていうのが正直あるんです。

OIT:2011年の東京国際映画祭で上映されて、その後公開まで一年位かかってますね?
小林啓一:そうですね、一年ちょい。

OIT:その間は紆余曲折があったんですか?
小林啓一:東京国際で上映した後、次どうしようかっていう時に、サンダンスとか、色々な海外の映画祭に持って行けば、配給の人もやりたい所が出てくるんじゃないかということで動いていたんですけど、そうこうしてる内に夏ぐらいに、小畑さんっていう新宿武蔵野館の人が、東京国際で観て、やりたいと言ってきてくれたんです。

OIT:劇場の人が最初に声を掛けてくれたんですね。ところで、映画祭では海外に行かれたんですか?
小林啓一:行きました、全部っていう訳じゃないですけど、サンダンス映画祭は凄かったですね。インディーズの最高峰って言われるだけあって、お客さんの眼も本当に肥えてる。

OIT:日本語のべらんめえ調とかは伝わらないですよね?
小林啓一:多分、伝わってないと思うんですけど、雰囲気とかでくすくすずっと笑ってて、最後の方になってくると大きな笑いになった。病院の新聞が印刷屋さんの仕事になってたところなんかは、あーみたいな感じで(笑)。ロバート・パティンソンのところは、凄い拍手が湧きました(笑)。

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