OUTSIDE IN TOKYO
GABE KLINGER INTERVIEW

ゲイブ・クリンガー『ポルト』インタヴュー

6. 最近の映画に多い「今起きているリアルなこと」という概念から、
 映画を一度切り離してみたいと思った

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OIT:カフェのシーンは同時に録音していますか?
GK:うん、でも、カフェの人たちは口ぱくで、実際に声は出していない。声は後から入れたんだ。音楽も入っていないよ。

OIT:ジョン・リー・フッカーも?
GK:そう、ジョン・リー・フッカーも後から入れた(笑)。台詞を言っているのもアントンとルーシーだけ。二人にはマイクをつけているけど、音響の仮テイクは録音しても、その他のみんなにはアクションと共に、「今度はカップをカチャカチャ鳴らしていいよ」という指示を出したんだ。マイクで録音して、グラスが当たる音やタバコを吸ったり、サウンドのレイヤーを少しずつ入れていった。あと、カフェのバーの後ろにはスモークマシーンを入れていた。煙が少し漂う感じの画にしたかったから。

OIT:フィルムの選択も含めて、夢のようにするとか、時間軸によって異なるフォーマットを選んでいることについては?
GK:僕らの記憶は印象に基づいていて、夢のようだ。今の映画によくある、あまり好きではない要素は、全てをとてもリアルに見せなければいけないこと。一人称で登場人物を追いかけるような今のVRのトレンドも、僕らが日頃経験している現実のように体験していると思いこむけど、その体験がリアルだと言っても、僕らの人生はそうじゃないと思う。ほとんどの場合は記憶や思い出で出来ている。今は起きたことも、すぐに過ぎるし、全てが過去になってしまう。だから起きていることについて考えると、全ては断片的で印象に基づいている。覚えていることも、間違えて覚えていることも、忘れることも、想像することも。それが僕らの日常で、印象的な記憶の連なりに過ぎない。覚えていることでさえ。僕はその内面的な記憶を表現したかったんだと思う。二人の登場人物が、現実の霞みがかった瞬間を生きながら思い出そうとしている。それが背景にある。最近の映画に多い「今起きているリアルなこと」という概念から、映画を一度切り離してみたいと思った。それはある時に起きたラブストーリーで、登場人物たちがそれを追体験している。それがうまく伝わるといいけど。

OIT:自分のことは映画作家と考えていますか?映画作りは、ずっとやりたいと思っていたことですか?
GK:もちろん!15歳で初めてカメラを買った。『ポルト』でも使ったスーパー8カメラで、まだ動く、60年代のキャノンのズーム・カメラだ。子供の頃は母のソニーのカメラで遊んで、週末に友達のところで一緒に短い映画を作ったりしていた。だからその欲求はずっとあったと思う。大きな観客に向けて出すのはこれが初めてだけど、たくさんのチャレンジを伴うものだね。でも楽しい体験だから続けたいと思っている。でも分からないよね。いつかやめるかもしれないし、ピアノを弾きたいと思うかもしれないし、ギリシャの島で釣りに興じたいと思うかもしれない。でもまだ何本か語りたい物語があるから続けていくつもりさ。

OIT:この時代に映画で物語を語ることについてどう思いますか?
GK:映画がずっと大好きだし、見るのも好きだ。ものの見方を映画を通して学んできた。いい脚本とか、自分が撮るならどう撮るとか、どんなショットに分解するか、どんなレンズを使うか、どんな音響か。僕の頭は自然とそこに行ってしまう。小説家がある瞬間を説明するのにどんな言葉を選ぶか考えるのと同じように。絵描きが風景を見た時、どんな絵の具でどんな色を使うか。それは抑えようがないこと。僕の頭は良くも悪くも映画を通じて物事を見てしまう。

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