OUTSIDE IN TOKYO
ELISE GIRARD INTERVIEW

エリーズ・ジラール『ベルヴィル・トーキョー』インタヴュー

2. 彼らがかつて生きてきた親密な時間が、スクリーンにも現れるだろうと思ったのです

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OIT:『ベルヴィル・トーキョー』の脚本には、エリーズさんの実際の生活の言葉が反映されていますね。映画館のお二人(ジャン=ルー役のジャン=クリストフ・ブーヴェとジャン=ジャック役のフィリップ・ナオン)との会話がとても楽しいですよね。
EG:ちょっと映画をよく知っている人達の言葉遣いですよね。例えば、凄くシンプルな言葉で、今週は、How muchって、何人だの“人”さえも言わないんですね。今週いくつだって、これは観客動員数のことだって分かるっていう。

OIT:『イグアナの夜』(ジョン・ヒューストン/64)が47とかっていうセリフがありましたね。脚本は完全に近い形で事前に作られたのですか?
EG:そうです、三年かけました。

OIT:最初に脚本を書かれて、その次にキャスティングの段階でなぜ彼ら(ヴァレリー・ドンゼッリとジェレミー・エルカイム)を起用したのでしょう?
EG:当初、一番心配だったのはジュリアン役(ジェレミー・エルカイム)を誰にするかっていうことで、マリー(ヴァレリー・ドンゼッリ)はそんなに拘る必要ないなと思ってたんですけど、実際はマリー役が難航しました。それで、ジェレミーに会ったんですね。ジェレミーは、すぐにシナリオを凄く気に入ってくれて、そこで、マリー役にヴァレリーはどうだっていう風に紹介されたんです。実は、マリー役は、ジェレミーに出会う前から色々な女優さんにオファーしていて断られていたんです。最初は、ジェレミーとヴァレリーがカップルであるということを意識してなかったんですけど、この二人はちょっと付き合ってた期間があるんだっていうことが、偶然、オーディションをしていたら分かってきたんです。それまでずっと役の上でのカップル役を女優さん達に拒否されてきたので、ジェレミーの子供の本当の母親であるヴァレリーがマリーをやってくれたら素晴らしいわ!って思ったんです。二人の俳優が既にある意味の親密性を持っている方が私としては有り難いわけですから。この映画は、カップルが上手くいかない状態から始まるわけですね、しかもハッピーな時代というものをフラッシュバックで描くわけでもありません。もう駄目になりそうなカップルだけど、彼らがかつて親密な時間を生きてきたっていうことが、彼らの歴史に実際にあれば、自ずとそれがスクリーンにも現れるだろうと思ったのです。それは私にとってはプラスαだったわけですね。

OIT:マリー役のキャスティングで何回か断られたというのは、彼女が悲しい女性だと思われたからなのでしょうか?
EG:そうですね。やっぱり女優にとっては悲しすぎるという理由から。もちろんオファーした女優さん達は既に有名な、名の知れた女優さん達ですから、それは悲しすぎるという理由だったんですけど、ヴァレリーとジェレミーというのは私がオファーした時は全くの無名だったんですね。

OIT:その後、ヴァレリーが『わたしたちの宣戦布告』(11)を撮るわけですね。
EG:そうですね、私の撮影のずっと後に撮影されてます。

OIT:あの二人はいわば“最強のカップル”だと思うんですけど、発見されたのはエリーズさんだということですね?
EG:気に入りましたね、一度で。とてもお似合いのカップルだと思いますね。


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