『ブルー・バレンタイン』(10)と『マリリン 7日間の恋』(11)ですっかり虜にされたものの、遡って思い返してみると、『シャッター・アイランド』(10)のドロレスはなかなか良かったけれども、『脳内ニューヨーク』(08)や『アイム・ノット・ゼア』(07)では彼女の出演シーンの記憶がほとんどなく、ヴェンダースの『ランド・オブ・プレンティ』(04)に至っては、主役まで演じていて、なかなか悪くない映画だったという感触すら持っているものの、あの映画での彼女は果たしてどんな表情をしていただだろうか?もう一度改めて見直してみたいなどと、個人的には呆けた感想しか出てこないミシェル・ウイリアムズは、今や、彼女の主演作に関して言えば、"ミシェル・ウィリアムズ映画"とでも言うべきジャンルに括りたくなるほどの圧倒的な存在感を放つ"素晴らしい女優に成長した"と理解することで、自らの記憶の頼りなさはひとまず棚に上げておきたい。(実際の彼女は、『ランド・オブ・プレンティ』と『ウェンディ&ルーシー』(08/未)でインディペンデント・スピリット・アワード最優秀主演女優賞に、『ブロークバック・マウンテン』(05)では、アカデミーの最優秀助演女優賞にノミネートされている、名実ともに今、最も勢いのある女優である。)
映画は、彼女の腕の黄金色の産毛を暖かい逆光が照らし出すショットから、キッチンの床を踏む色とりどりのペディキュアを施した素足まで、ミシェルのボディ・パーツをフェティッシュに、そして、光り輝くように捉える一連のシークエンスから始まり、ミシェル・ウイリアムズならではの湿り気と色香がスクリーンを満たしている。しかし、画面に映えるミシェル演じるマーゴの住む居心地の良さそうな空間、暖かくユーモアに満ちた夫ルー(セス・ローゲン)との生活、マーゴ自身の魅力的な佇まい、といった多くの人が羨むような等身大の"幸福感"を感じさせる日常の風景に関わらず、マーゴの表情は憂いを帯びている。